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企画特集−座談会「働く子育て世代の悩み」
食事と心の豊かさ どうサポート

2017.7.19

最近は共働き夫婦が増えるなど生活スタイルが変わってきました。忙しい生活の中で子どもの健康を食事でどうサポートしたら良いのか、正しいしつけとは何なのか、保護者の不安や悩みは尽きません。そこで埼玉新聞社は健康栄養学科、幼児保育学科の専門職業人を養成する国際学院埼玉短期大学(さいたま市大宮区、大野博之学長)の協力のもと、子育ての悩みを解消すべく先月、同短大で座談会を開催。参加した母親らは「皆、同じようなことで悩んでいるんだ。相談できて気持ちが楽になった」と言います。子育てを楽しむヒントを探ります。= 埼玉新聞7月19日付掲載 =

徳田侑子さん(3児の母)
五十嵐さやかさん(2児の母)
有川智子さん(3児の母)
細井藍さん(2児の母)

正直、自信ない

埼玉新聞7月19日付。小さな子どもを持つ母親たちと大学教授の座談会を通じて子育てを楽しむヒントを探る

─家庭での食事について、皆さん栄養バランスや毎日の献立に悩んでいるようです。

徳田 パッと思いつくメニューはいつも似たようなものばかり。できれば季節の食材を使ってバランスよく食事を作りたいと思っているのですが。

塩原教授 マンネリ化しますよね。先日、栄養士が多く集まる会があったのですが、病院でも2〜3週間くらいのサイクルメニューで運営していることが多いです。お母様方が悩まれるのは当然です。365日ですものね。

1週間の食事計画表と三つの器

そこで、1週間の簡単な計画(一覧表)を書いてはどうかと思います。まずは素材。お肉なら上から鶏肉、豚肉、牛肉というように書き込むだけです。お魚は季節によって種類が豊富ですし、あとは卵や大豆、メーンになる食材を振り分けていきます。同じ素材でも揚げる、焼く、炒める、煮る、蒸すなどさまざまな調理方法があります。自分のレパートリーを書き出してみてください。

もう一つ、栄養士がやる方法は、ご飯以外に三つの器を考えることです。一つの器が牛乳や果物でもいいのですが、メーンディッシュになる魚や肉のほかに、野菜を中心にしたものをもう一つ入れることでバランスをとるのです。調理法が被らないように「焼く」から「揚げる」に変えたり。結構アレンジができると思います。

五十嵐 私は料理が得意ではないので、まずメニューが浮かばない。確かに、この表を見れば「あっ、そういえば買った食材でこれを作ろうと思っていたんだ」というのを思い出せそうです。買い物で「安い」「旬のものだ」「これを作ろうかな」と思って、買って帰るのですが、平日は「あれ?何をしようと思ったんだっけ」ということも。

塩原教授 短い時間の中で、仕事のことからパッとお家のことに頭を切り換えなきゃいけないんだと思うんです。

いまはお酢とかでも調合酢になったものが売られているじゃないですか。それに野菜を刻んで入れておくと、1週間ピクルスをずっと食べられるので、「野菜がちょっと足りないな」という時に便利です。この季節ならカブ、ニンジン、キュウリなど。ニンジンの赤はとても鮮やかなので、子どもは手に取りやすい。そうやってニンジンの味に慣れると、大きくなってからニンジン嫌いもないですよ。

─食材を選ぶとき、新鮮なものや産地、添加物なども気にしていると思います。

塩原明世国際学院埼玉短期大学健康栄養学科教授・博士(学術)・管理栄養士

塩原教授 埼玉は採れない作物がないぐらい、何でも採れるところです。カブは、柔らかくて白くて、そのままスライサーで切って塩をかけるだけでもおいしくいただけるし、お子さんでも柔らかいので食べやすいと思います。今の時季ですと、ナスやトマトなどの夏野菜もいいですね。夏バテ防止で、キュウリやミョウガなどを合わせた、みそ仕立ての冷や汁も簡単です。その汁にそうめんをつけたり、うどんを入れて食べたり。

忙しいと、手軽な総菜を買うこともあると思いますが、その日のうちに消費するものは比較的味が濃いことを除けば、添加物についてはそれほど影響ないと思うんです。ただ小さいころから塩分の高いものに慣れてしまうと、味を感じなくなってしまうこともあるので、毎日にならないように気を付けていただけたらと思います。

できていることを評価 気持ち楽に

─皆さんはお子さんと一緒に食事をしていますか。

有川 朝は子どもたちに食べさせることに徹してしまいます。私は仕事に行かなければならないので、一緒に食べている状況ではなくて。実はあまり自信がないんです。うちは雰囲気が良くないのかな、と。子どもたちには何かしら食べさせないと、という気持ちがあって、保育園に入ったときから作らなくていいものばかり食べさせてきてしまっています。パンにジャムを塗って渡すだけ、とか。

下の子が3歳、上は5歳なんですけど、一人で食べられるようになったら「二人で食べてて」みたいな感じで。もう一人赤ちゃんがいるので、自分で食べられそうなものを与えています。実家は母が専業主婦だったので、毎朝一緒に食べていたような気がするのですが。

夜の食事に関しても、子どもたちは集中力も途中で切れてしまうので、最初は好きなものを一生懸命食べるんですけど、だんだんダラダラしてきて。「早く食べなさい」って。楽しい会話というよりは食べなきゃいけないという、せかしている状況です。子どもたちも、それで楽しいのかなというのがいつもすごく気になりますね。だから、こぼしたりとか箸の持ち方というのも二の次です。

佐野教授 皆さん、家族の食事の場を大事になさっていますね。例えば朝食は手軽なもので済ませてしまうというのは、ある程度は仕方のないことだと思います。忙しいですし、本当に大変な中でとにかく朝食を抜かないのが大事で、それができていることを評価してみると少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。朝、食事をすると、それがエネルギーになって、お子さんの1日の活動がしっかりできます。朝は機嫌良く送り出したい気持ちのほうが強いと思いますから、そんなに手をかけなくても十分かなと思います。

食事準備する姿に「大事にされている」

佐野ゆかり国際学院埼玉短期大学幼児保育学科教授・教育学修士

一緒に食事をすると、食事を準備するお母さんやお父さんの姿を、子どもたちは心の中に一生持ち続けると思うのです。言葉にすると照れくさいけれども、自分が大事にされている、愛されているという思いが基盤にできる。小さいうちはそれが何より大事なことなのです。

最近は1歳、2歳でもう朝食を食べない子どもが出てきているようです。独りで食べる「孤食」や「欠食」、あるいは「バラバラなものを食べる」ことが目立ってきています。最近、保育指針や幼稚園の指導要領の中に、食育が大事な項目として挙げられるようになりました。

普通、食事は1日に最低三度はあるものです。わざわざコミュニケーションの場を作らなくても、いろんな話をしたり、大人のすることを見て学んだり。そういうのが大事かなと思います。

塩原教授 子どもの食べるのが遅いというお話ですが、よくかんでいるのではありませんか。時間だけを見ると「うちの子はなんで遅いのかしら」と思うけれども、かむことはとても重要です。小さい子は顎を動かして脳の発達を促しているんです。

ですが、20分〜30分経っても食べきれなかったら、「じゃあ今日はもうおしまいにしようね」と片付ける。子どもが好きなものだったらつらいから、次からだんだん早く食べるようになる。時間で決めてあげるのも、時には大事かもしれません。

朝食はパン、よく分かります。たぶん罪悪感は、袋を開けてそのままあげるパンにあると思うんですよ。ご飯は加熱しているじゃないですか。自分が炊いた、っていう。ちょっと気になったら、ふりかけをラップの上にまいて、キュッておにぎりにして出してあげたら、お母さんの手作りですよ。少しは罪悪感が減ると思います。

─手作り感、いいですね。普段、食事に関してしつけを実践していることについてはいかがでしょうか。

細井 自分が子どものころは母親に厳しく言われていました。食事の席ではきちんと食事に集中する、こぼさない、箸の持ち方やマナーなど細かいこともいろいろ言われた記憶があります。大人になったときに、それがすごくいいことだったと実感したので、子どもたちにもきちんと教えてあげたいです。

ただ、うちは3歳の男の子がいるのですが、やはり男の子は食べることに集中できる時間が割と短く、すぐ遊びの方に気がいってしまう。箸の持ち方もそんなに気にしていない。まだ3歳だから、と言ってしまえばそれまでなんですけど、せっかくの楽しい食事のときに厳しく言ってしまい、自分の中でも葛藤があります。どの年齢から、どれぐらいの頻度で言えば楽しく食事をとりながら、かつマナーが身に付くのでしょうか。

佐野教授 お箸の使い方などは一般的に、幼稚園の年中でしつけをすることが多いようです。変なお箸の持ち方を自己流で身に付けてしまうと、後で直させても、トレーニングする期間が終わると元に戻ってしまうという研究結果もあります。そのときはできなくても根気強く続けるのが大事だと思います。

─生活のリズムという点からも、アドバイスがあれば。

佐野教授 偏食で悩まれている方もいらっしゃると思いますが、よく「すきっ腹にまずいものなし」と言うように、体をしっかり動かして、おなかをすかせて食事に向かうというのが基本的に大事なことです。多少嫌いなものでも本当におなかがすけば食べてくれます。最近、子どもの運動量がすごく減っていまして、自由保育をしていても、昔の子どもに比べると園内での歩数が半分以下に減ってきているんです。何か配慮をしないかぎり運動不足になってしまう世の中。しっかり体を使って遊べるように、家庭でも園でも協力してやっていかないといけないと思います。

また、遅寝遅起きで登園すると、保育園のお昼寝の時間に眠れずにグズグズ過ごすことになります。たとえ前の晩に遅寝になっても朝は早い時間に起こして、日光に当たること。カルシウムを取っても、運動と自然の光でビタミンDを作らないと骨は丈夫になりません。

─有川さんはお子さんが3人いて、ワークライフバランスについてもお悩みだとか。

有川 今3人目が生まれてまだ1歳になっていないので、私も主人も育児休暇を取っているんです。今後、復帰したときにどうやって働くのか考えることが多く、土日に私が1人で一気に3人の面倒をみるというイメージがすごく大きいんですよね。仕事に時間を費やせば、子どもの時間が減る。そこのバランスってすごく難しい。

いつも心の中でモヤモヤしています。育児が自分の全てでもないし、仕事も自分の全てではない。自分だけの時間がちょっと欲しい。そういう時間を大事にするからこそ、子どもに優しくできたり、仕事も頑張れたりするのかなと思うのですが。

佐野教授 一般的に日本では、子どものいる男性の家事や育児の分担割合は世界に比べて低いです。例えばスウェーデンでは42・7%の男性が負担をしている一方、日本は18・3%。韓国では25・8%と、アジアの中でも日本は低いのが現状です。原因は、やはり仕事が忙しく、通勤時間が長いことです。

家事って、男性が考えるよりもこまごまとした事がたくさんありますよね。男性の場合、育児、食事、後片付け、犬の散歩など、目立つことだけ思い浮かべていて、「自分は結構手伝っている」という意識になりがち。でも、もっと奥深いことを一つ一つ挙げていくと膨大な量があります。

まずは、やらなくてはいけないことをすべて書き出してみる。そして男性に、できることや得意なことを選んでもらうのも一つの手です。お子さんも少し大きくなれば、いろいろとお手伝いできるものがあるので「僕、ここやる」「私、これできる」というように分担する。自分で自発的に言ったことだと、押しつけられた感じがなく積極的に気持ちよくやってくれると思います。

お手伝いで身に付く知的な頭の働き

幼い子ども持つ母親が子育ての悩みを打ち明けた=さいたま市大宮区の国際学院埼玉短期大学

子どもがお手伝いをする時間も、日本は世界より短い状況です。子どもがお手伝いをすれば大人が褒め、子どもは喜びますよね。そうすると「自分が役に立っている」という自信にもつながるし、実はお伝いってすごく勉強にもなるんです。

必要な頭の働き方というのは、観察して、記憶して、まねして、やってみてどうだったかを判断して、試行錯誤しながら自分でレベルアップしていくこと。一生使う知的な頭の働きですよね。そういったことが家事の中でとてもたくさんある。子どもにお手伝いを選ばせて、やらせてあげるというのも大事かなと思います。

それから、運動をすると脳にBDNFという脳細胞を発達させる物質が分泌されます。科学的に証明されていて、しっかり運動した後の方が記憶力が高まることが実証されています。親御さんと一緒に運動すればいいコミュニケーションの時間にもなります。

一方で、子どものことも何もかも忘れて、自分の好きなことに打ち込む時間もとても大事です。その時間があるからこそ、働き続けられるということもありますよね。

─座談会を振り返っていかがでしたか。

徳田 皆さんが言っていたことで「ああ、うちもそうだな」と思うことがあり、やはり似たようなことで悩んでいるんだなと思いました。具体的にお箸の持ち方は年中がしつける時期というお話もいただけたので、改めて家でも取り組んでみたいと思います。

豊かな人間力と確かな専門力を育む

さいたま市大宮区にある国際学院埼玉短期大学は、幼児保育学科と健康栄養学科があり、保育士や栄養士、調理師を目指す学生らが日々切磋琢磨している。

いずれの学科も、身に付くのは教養とコミュニケーション力からなる「豊かな人間力」と、専門職業人としての知識や技能からなる「確かな専門力」。幼児保育や栄養指導、食の安全管理など、各分野の最前線で卒業生が活躍している。

それを可能にしているのは、国際学院の「人づくり教育」の取り組みだ。資格取得を目指した実践的な教育をはじめ、思いやりや自主性など豊かな人間性を育む教育を行っている。この「人づくり教育」を通じて、学生たちは日々確実に成長し、いきいきと輝くのだ。

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