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2016.4.12

国際芸術祭と地域経済

三浦留美

城西大学経済学部非常勤講師

三浦留美

みうら・るみ 明治大学大学院政治経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。専門は文化政策、文化経済学、経済政策。

■さいたまトリエンナーレ2016

今秋、さいたま市を舞台に「さいたまトリエンナーレ2016」が開催される。9月24日から79日間に渡り、与野本町駅〜大宮駅周辺、武蔵浦和駅〜中浦和駅周辺、岩槻駅周辺の3カ所を主な開催エリアとして展開される。

総事業費は約7億円で、実行委員会会長は、清水勇人・同市市長が務める。第1回目となる今回のテーマは、「未来の発見」で、一人一人が未来を夢見る力を持てるようにというディレクター芹沢高志氏の願いが込められている。

「さいたまトリエンナーレ2016」のプログラムの特徴は、市民が創造のプロセスに参加できるプロジェクト型であり、作品が新作であるということだ。作品の内容もインスタレーション、音楽ライブ、ワークショップ、演劇と多様だ。

さいたま市は、トリエンナーレを「さいたま文化」の創造・発信の契機とし、まちの活性化や文化芸術都市創造を担う人材の育成につなげたい考えだ。

■国際芸術祭の経緯

トリエンナーレとは、3年に一度開催される国際芸術祭で、2年に一度のビエンナーレも含めると近年は各地での芸術祭の乱立を危ぶむ声もある。なぜ国際芸術祭が日本で広がったのだろうか。

日本では、バブル崩壊後に起こったハコモノ行政批判により、建物といったハード面から運営面というソフト面の整備へのシフトが進んだ。また、1995年の阪神・淡路大震災は、アートが社会に対して果たす役割を考える大きなきっかけとなった。

一方で、既存の博物館や美術館で作品を展示するだけから、施設の外に飛び出して、まちの中で展示やパフォーマンスを行うイベントや事業も増えてきた。

こうした背景の中、2000年に始まった越後妻有地域(新潟県)の里山で展開される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の成功を機に、日本各地で国際芸術祭が増加してきた。

国際芸術祭は、行政、大学、NPO、企業など複数の組織体が関わる場合が多く、今回のように実行委員会形式という運営形態をとる場合が多い。大きくは文化振興を目的とする文化政策と捉えることができるが、地方自治体においては、芸術や文化そのものに対する支援というよりは地域活性化の一つとして考えられている場合が多い。

したがって、観光、経済、まちづくり、教育、福祉といった分野との連携とともに各分野への波及効果が期待される。

■インパクトと影響

国際芸術祭の真骨頂は、祭典の後にどれだけのインパクトと影響を開催地域に残せるかである。トリエンナーレという「場」で、市民とアーティストはコミュニケーションを通してアート活動の体験を共有することになる。

そこからいかに新しい知識や価値の創造が形成されるのか。さらには、地域にある潜在的な文化資源の掘り起こしや新しい経済活動へつなげられるのか。

トリエンナーレが長期的に何らかの形でさいたま市に根付くことが「さいたま文化」による独自の文化芸術都市創造へつながることになる。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=