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2016.4.19

こころからの健康づくり

長谷川恵美子

聖学院大学人間福祉学部准教授

長谷川恵美子

はせがわ・えみこ 東京大学大学院教育学研究科修了。同大学院学校臨床総合教育研究センター助手を経て現職。臨床心理士。健康運動指導士。心臓リハビリテーション指導士。主な著書(共著)に『エピソードでつかむ児童心理学』『心臓リハビリテーション実践マニュアル―評価・処方・患者指導』など。

■病気とうつ

病気になると経験したことのない治療、食事や運動の制限、社会の中での役割の変化などさまざまな変化に直面し予想以上にストレスを感じやすい。

そのストレスは本人や家族の精神的な負担になるだけでなく、治療や回復を妨げる要因となるため、近年国際的にがんや循環器疾患の治療をはじめ、精神科以外の医療場面でも、こころのケアが注目されつつある。

■ストレスをコントロール

ストレスが上手にコントロールされないと、飲酒、喫煙、食欲などが抑えにくく、睡眠のトラブルも発生しやすくなる。

一方、抑うつ症状、軽度のうつ病の治療・予防方法として、近年薬物療法のほかに、心理療法や運動療法なども有効であることが明らかになってきた。

つまり自分にあった方法で、ストレスを上手にコントロールすることは、心身の健康づくりの一つの方法となった。

■病気になりやすいパーソナリティ?

近年、循環器領域では心臓や血管の病気になりやすいパーソナリティである「タイプD」が注目されている。

このタイプでは、ネガティブな感情を喚起しやすく、感情表現を抑制する傾向、言い換えればストレスを大きくしやすく、抱え込みやすい。

自分の考え方や性格は変えようがないと思われるかもしれないが、実際に大幅に変えることなく、自分の傾向や癖に気づき、他の考え方や方法を取り入れるなど、ちょっとした工夫でバランスを調整することができる。

また心臓血管疾患の研究で報告された「タイプD」ではあるが、このタイプでは抑うつ状態にも陥りやすいことが明らかになってきた。

つまり「物事を悪い方にばかり考えず、1人で抱え込まない」よう心がけることで、心臓や血管の病気のリスクを軽減させるだけでなく、うつ病も予防できるとも考えられる。

■一病息災

ストレスが軽減され、気持ちのゆとりが生まれると、飲酒・喫煙・食欲を抑えられるだけでなく、前向きに穏やかな気持ちで日常を過ごすことができ、健康づくりや病気からの回復を促進させることが可能である。

心臓リハビリテーションでは、心疾患からの回復と再発予防を目的に、身体面だけでなく精神面へのアプローチを含めた統合的なサポートが提供されている。

日本では昔から一病息災という言葉があるが、一つの病気をきっかけに、日常生活を振り返り、自分の癖やバランス状態に気づき調整し、ストレス対処や問題解決のスキルを向上させることで、ストレス社会を乗りきり、より力強く復帰する人も増えている。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=