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2016.5.10

SDGsと企業の役割

神田麻貴子

城西大学経済学部非常勤講師

神田麻貴子

かんだ・まきこ 東京生まれ。青山学院大学経済学部卒。明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得退学。会計修士(専門職)。修士(経営学)。2016年より現職。専門は環境会計論、CSRマネジメント論、財務会計論、貨幣経済論。

■経済、社会、環境に対応

2015年9月、国連本部での「持続可能な開発に関するサミット」において「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。その中核に「持続可能な開発目標」(SDGs)がある。これは1992年6月の「国連環境開発会議」(地球サミット)から20年の時を経て2012年6月に開催された「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)で提起されたもので、2016年1月から施行されている。

2015年に達成期限を迎えた「ミレニアム開発目標」(MDGs)が8の目標と21の項目、60の指標を有していたのに対し、SDGsでは17の目標と169の項目、230の指標が示され、国際目標の対象範囲は目に見えて拡大している。すなわち、MDGsが、途上国における貧困・教育・健康といった問題の解決を中心とし、先進国はそれを援助する側という位置付けであったのに対し、SDGsは、経済、社会及び環境という3つの側面全てに、先進国、途上国を含む全ての国が対応するよう求めている。

いずれの指標も国家レベルで測るものであるが、SDGsは、「民間部門が新アジェンダの実施における役割を有する」と明言しているように、(零細企業から多国籍企業に至るまで)企業による取り組みに対して期待するところは大きい。

■持続可能な生産・消費形態の確保

SDGsの目標の一つに「持続可能な生産・消費形態の確保」がある。天然資源の効率的な利用や、廃棄物の大幅削減、化学物質等の悪影響の最小化といった具体策を講じることによる持続可能な社会の実現である。

例えば、スーパーやコンビニ、家庭における大量の食品廃棄が問題視されて久しいが、反射的に「もったいない」や「環境によくない」という印象を抱いてしまうその問題の背景に在る、国内外の自然や社会にかかる間接的な環境負荷がいかほどのものか、想像が及ぶであろうか。

自然破壊や経済格差の拡大に積極的に加担したいと思う消費者や事業者がいないことを前提とすれば、意図せずしてそうした事態が引き起こされることの無いよう、既存の仕組みを改善していくほかない。しかし、消費者らが持続可能な社会の形成に適した商品・サービスを選択するための手掛かりはどこにあるのか。

■責任ある生産と供給

まず、事実を知らなければ、何も想像できず、何も行動できない。ここで主体的に動くべきは、サプライチェーンの上流にいる企業である。企業は原材料の調達や製品の製造、人的資源の活用といった段階で「責任ある生産」を行うとともに、チェーンの下流にいる消費者や事業者に適切な情報提供を行い、問題認識を醸成する「責任ある供給」を果たすことが求められよう。

自然や社会と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持った消費者らは、自ずと「責任ある消費」行動へと結実することが予想される。

昨今は、持続可能な経営に関する情報を、自社の企業価値創造と関連づけて開示する統合報告の潮流がある。今一度、企業をとりまく各主体とのコミュニケーションのあり方を再検討し、世界の変革に寄与することを期待したい。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=