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2016.5.26

シュウカツのウソとマコト

小澤伸光

駿河台大学経済経営学部長

小澤伸光

おざわ のぶみつ 51年生まれ。大阪大学法学部卒。東洋信託銀行(現三菱UFA信託銀行)勤務後、筑波大学大学院博士課程社会工学研究科単位取得退学。16年経済経営学部長就任。専攻は人的資源管理論、経営リーダーシップ論、技術経営論。著書に「新版経営学」(共著、実教出版)など。

「シュウカツ」「ES」「盛る」「お祈りメール」「コミュケ」「リシュメン」。皆さんは、これらの言葉の意味が分かるでしょうか。すべて大卒就職活動に関連する略語です。

大卒新卒の就職活動(シュウカツ)の第一関門は、エントリーシート(ES)の提出です。志望理由、自己PR、そして企業から与えられた課題の回答をESに書くことになります。

■学生の勘違い

大学生にとり自己PR材料を探すのは意外と困難です。そこでアルバイトやサークル活動を素材とするのですが、活動実績を誇張する(盛る)例が少なくありません。一つのサークルに10人を超える副部長がいることになります。

しかし、多くの学生がサークル活動やアルバイト経験を語るために、人柄・個性の違いをアピールできず、「今後のご活躍をお祈り申し上げます」という不採用通知(お祈りメール)が届きます。

企業が採用選考で、コミュニケーション力(コミュケ)、行動力、協調性を重視することに気づいた学生は、ESや面接でコミュニケーション力をアピールするのですが、ここにも勘違いが生じます。コミュニケーション力の基本は、相手の質問の意図を理解する力「聴く力」です。自己PR、志望理由を丸暗記して話しても評価されません。

■企業が欲しい人材

採用担当者は、一緒に仕事ができる仲間、仕事を通して能力を高める可能性の高い人材が欲しいのです。というのも、日本企業の多くは長期的な雇用を前提とし、入社後の教育訓練を通して人材育成を図るからです。

数年来「即戦力」採用が喧伝されていますが、知り合いの経営者は「即戦力は1年も持たない」と断言しています。企業のいう即戦力は、「早く仕事を覚えられる」人材です。正社員経験のない大学生に、即戦力を期待するのは無理に決まっているからです。

それでは「資格」はどうでしょうか。「資格を持っていると就職は有利」とはいえません。人柄・人物、そしてコミュニケーション力が企業の期待する水準を超えており、資格が仕事と関連していて、初めて資格を持っていることが評価されます。資格の重視度は意外と低いのです。

■入学目的を明確に

最近では、大学での学習履歴(履修履歴)を面接で活用する企業が増えてきました(リシュメン)。昨年末に経団連が発表した「採用に関する指針」で、大学での履修履歴を面接で活用することを勧めているからです。

目的もなく漫然と学生生活を過ごすのではなく、自分で見つけた課題を解決し、やりたいことを実現するために、大学での学習を活用することから始めましょう。そのような行動実績が評価され、内定を得ることにつながります。

何となく、あるいは周りに勧められてではなく、「なぜ大学に行くのか」を自問自答し、自分のやりたいことができる大学を選ぶことが、就職活動の第一歩となっているのです。世間の常識は実態を見ていない非常識であることに是非とも気づいてください。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=