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2016.6.7

攻略戦に学ぶ「戦略」の意

陰山孔貴

獨協大学経済学部経営学科専任講師

陰山孔貴

かげやま・よしき 77年大生まれ。早稲田大学大学院修了後、大手電機メーカーに入社。ヒット商品の企画などを行う。経営学者(経営学博士・MBA・工学修士)。担当科目は「経営戦略論」。

人気の大河ドラマ「真田丸」。そこで繰り広げられている「戦略」は、現代のビジネスマンにも大いに参考になります。

■「真田丸」に「のぼうの城」が登場

今、NHKで放送されている大河ドラマ「真田丸」を毎週、楽しみに見ている方も多いのではないでしょうか。

「真田丸」は今年のNHK大河ドラマで、天才の父、秀才の兄、その2人を追いかける好奇心と冒険心旺盛な次男坊の「真田信繁」を主人公とした物語です。

「真田丸」に現在の行田市にあった「忍城(おしじょう)」が登場します(今月12日放送「攻略」)。忍城は北を利根川、南を荒川に挟まれた要害堅固な平城で、小説や映画『のぼうの城』の舞台としても知られています。

■「のぼうの城」攻略戦における「戦略」不在

当時の忍城は北条方の城であり、豊臣秀吉の北条征伐では豊臣方の攻撃に遭います。忍城を最初に攻めたのは「信繁」の兄、真田信幸の軍勢でした。しかし、信幸軍は忍城側からの反撃に遭い、苦戦を強いられます。

そこで信幸の代わりに石田三成が忍城を攻略することになります。三成は10万人の人夫を集め、忍城を囲む堤を造り、城を水没させる「水攻め」を仕掛けます。

ただ、三成のこの案に対し、三成と仲が良かった大谷刑部は「戦は思い通りに運ばないものだ」と三成を諭したと言われています。事実、堤は数日で完成しましたが、突然の大雨や忍城側の堤防破壊工作で堤が決壊し、大谷刑部が諭したように三成の水攻めは失敗に終わっています。

■「戦略」は「立案」と「実行」の組み合わせ

では、なぜ、この三成の水攻めはうまくいかなかったのでしょうか。主要因としては、「戦略」は「立案」と「実行」の2段階からなることを、三成が理解していなかったことが挙げられるでしょう。

三成は「立案」に重きを置く傾向があった武将だと言われています。実際、三成は忍城の水攻めを入念に計画しています。しかし、三成は「実行」段階になって予想外の大雨や忍城側の反撃にあい、失敗したのでした。三成は状況を正しく評価しなおし、再度「立案」すれば良かったのですが、そうはできなかったのですね。

■現代に生きる我々が歴史を学ぶ意味

三成の失敗から現代を生きる我々が学べることは何でしょうか。それは「戦略」は「立案」と「実行」の2つからなるということです。逆に言えば「立案」や「実行」のどちらかだけでは「戦略」にはならないということです。

ここで少し考えてみてください。あなたが働いている企業の「戦略」は、「立案」ばかり、もしくは「実行」ばかりになっていませんか。「戦略」には「立案」と「実行」の両方が必要なのです。

僕が好きな言葉に「鉄血宰相」と呼ばれたドイツ帝国宰相オットー・フォン・ビスマルクの言葉があります。

「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」

我々も歴史から多くのことを学びたいですよね。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=