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2016.6.23

日本の医療制度の課題

佐川和彦

駿河台大学経済経営学部教授

佐川和彦

さがわ・かずひこ 61年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(経済学)。専門は医療経済学。01年経済学部助教授。07年から教授。著書に「日本の医療制度と経済―実証分析による解明―」(薬事日報社)など。

■日本の医療費

厚生労働省が発表している国民医療費は、日本において1年間に費やされる医療費の総計を表す指標です。このデータによれば、2013年度の医療費は40兆610億円、1人当たりに換算すると、31万4700円に達しています。そして対GDP比率では8・29%となっています。

さらに過去にさかのぼってみると、金額についてはいうまでもなく、経済の規模と比較しても、半世紀以上にわたって拡大傾向が続いてきたことが分かります。

仮にこれからも医療費の拡大を受け入れていくとしても、そのための財源を確保していくことが重要な課題となります。しかし実際には、医療に割り当てることができる資源にも限りがありますから、どこかで歯止めをかけなければならなくなるでしょう。

さて、医療費の動向は全国どこでも同じというわけではありません。地域ごとにかなり違いがあるのです。一般に西高東低、すなわち西日本で高く、東日本では低くなると言われています。私たちは医療費総額の伸びとともに、医療費の地域差についても注視しなければならないのです。

■問題解決のために

経済規模の伸びと比べて医療費の伸びが極端に高く、既に医療費の水準も高くなっている地域においては、医療費の伸びを抑える政策を実施することもやむを得ないでしょう。医療費の伸びを抑えるための手っ取り早い政策として、医療保険の自己負担割合の引き上げがあります。

しかし、特定の地域だけで自己負担割合を引き上げることについては、住民の合意がえられないでしょう。当該地域の住民の医療機関受診を過度に抑制し、健康水準を低下させる可能性もあります。

これとは別に、都道府県の医療計画によって医療提供の調整を行うという制度があります。この方が地道ですが住民からの理解がえられやすいでしょう。

さて、根本的に医療費の伸びを抑制する理想的な方法は、厚生労働省が言うように生活習慣病予防によって老人医療費の伸びを抑制することです。病気にかかってから費やされる医療費を抑制することにはどうしても限界があります。病気を予防して医療費を抑制するという考え方は、おそらく誰からも受け入れられるものでしょう。この政策が効果を上げるためには、健康診断、健康教育、健康相談などの活動が重要になってきます。

さらに、医療の技術進歩も忘れてはなりません。医療の技術進歩は医療費が上昇する要因の1つにもなりますが、一方では技術進歩が通院日数や入院日数の短縮をもたらすことも考えられ、医療費を抑制する要因ともなりえます。

新しい研究によって従来行われてきた治療法の効果について再検討し、効果の薄いものについてはより効果の大きいものと入れ替えていくことで医療費の無駄を省くことも期待できます。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=