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2016.6.28

熊本・大分の復興と埼玉の役割

栗林純夫

東京国際大学経済学部教授

栗林純夫

くりばやし・すみお 53年生まれ。拓殖大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。政府交換第一期留学生として北京大学に学ぶ。94年より現職。延世大学客員教授などを務め、日本モンゴル協会「モンゴル諸相研究会」主査。11年モンゴル国功労勲章。専攻は開発経済学。著書に「北東アジア経済の相互依存構造(英文)」(韓国対外経済政策研究院)など

筆者は開発途上諸国の経済分析を専門としているが、この分野は「自然災害や戦災からの復興」という問題とも関連するところが多い。そこで、この「復興」という観点から、4月14日以後、大地震の被害を受けた「九州」(熊本・大分)と、関東(埼玉)との経済関係の意味を、少し考えてみたい。

■地域産業連関表

参考データの基本は、経産省公表の「日本の地域産業連関表(2005年)」である。年次は古いが、「概要を把握すること」が目的なので問題はない。

この表は、全国を九つの地域に区分して、各種産業が、各地域内で、相互依存関係を続けながら、他地域、そして国外の需要に応じて、どのように「財とサービス」を産み出しているかを示すものである。

この総額950兆円を「総産出」と呼び、それはまた「原材料」と「付加価値(GDPの地域版)」から構成(両者は、ほぼ半々)されている。

地域名と、その総産出の全国シェアを示すと、北海道4・東北6・関東43・中部13・近畿16・中国7・四国3・九州8・沖縄1となる。各地域の人口シェアも、ほぼこれらと同じである。

■埼玉と熊本・大分

ちなみに「関東」とは、東京・埼玉・千葉・茨木・神奈川・山梨・群馬・栃木、長野、新潟からなり、埼玉経済の規模は、その中で10%、全国比では4%を占め、東京の22%の大きさになる。

次に「九州」であるが、関東の2割弱の総産出規模を持ち、それを100とすると、六県のシェアは、福岡41、佐賀6、長崎10、熊本13、大分10、宮崎8、鹿児島12となる。つまり福岡が圧倒的であり、その一方で今回、被害が大きかった「熊本・大分」両県の総産出は、「九州」の23%、全国の約2%で、「埼玉」の約半分の経済規模となる。

■九州・東北の関東への依存度

この地域表を使って、簡単な計算をしてみると、九州6県の総産出は全国の約8%を占めるが、その9%は「関東地域の需要」によって生み出されたものであることが分かる。これが「九州の関東への依存度」である。また、この関東の「需要」とは、単に九州に対するもののみではなく、関東の地域内・地域外への需要が「直接・間接に総合されて九州に影響を与えたもの」という意味である。

「東北6県の関東への依存度」が、22%であることと比較すると、九州のそれは、少し小さいとはいえ、「我々は相互依存の関係にある」ことを、あらためて認識できる。この相互依存・共存関係の自覚こそが、復興支援の基礎であろう。関東・埼玉が生み出す需要が、九州・東北復興のために、いかに重要かということである。

また、「政府・都道府県の各々が、議員や首長などの、不急の視察旅行などを節約して、多少の支援を行うだけでも、仮設住宅の不足問題などは、解決できるのではないか」との思いも湧く。

なお関東の総産出は全国の43%を占め、その3%は九州6県の、またその4%は東北6県の、前述の意味での「需要」によって生み出されていることを付記しておきたい。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=