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2016.9.20

児童、生徒、学生を取り巻く教育環境の変化

渡辺英人

聖学院大学政治経済学部准教授

渡辺英人

わたなべ・ひでと 国際基督教大学大学院行政学研究科、同社会科学研究所助手、名古屋大学法学部同大学院法学研究科助教授を経て現職。

■家庭教育と学校教育

子どもの教育は「家庭教育」と「学校教育」の両方が協力し合って、形作られてきた。例えば、家庭では父、母に加え、祖父、祖母、そして兄弟、姉妹の関係から、年齢の違う人間関係を学ぶ場であると言える。一方、学校においては、同じ年齢の子どもたちを集め、同じ年齢の人間関係を学ぶ場であると言える。

家庭教育と学校教育、それぞれを「線」としてとらえるならば、家庭教育という垂直線、学校教育という水平線が直角に交差して、これらを直径とする円(正円)を描くことができる。

子どもの教育を円(正円)で表すとすれば、今日の社会ではどのようにとらえることができるだろう。学校教育においては、ひとクラス当たりの人数は少なくなったが、年齢の同じ子どもたちを集めて教育を行う形に変化はない。

しかし家庭においては、核家族化の進展、両親共稼ぎ家庭、あるいは少子化やひとりっ子の増加から、「年齢の違う人間関係を学ぶ」ことは困難になってきている。円(正円)で表すことのできた子どもの教育は、家庭教育を表す垂直線が著しく短いものとなって、円(正円)から楕円、ラグビーボール型へと変化してきているのである。このような変化を大人たちは正確に捉えているのであろうか。

■悩める心を持つ子どもたちに寄り添い、居場所をあたえること

このような中、児童、生徒、学生たちにもさまざまな問題が起こっている。東松山市や昨年の川崎市での少年事件の発生では、元々は友人、仲間関係であった子ども同士が、メールのやり取りや、コミュニケーションのちょっとしたミス、誤解から暴力、殺人事件へと発展したものであった。

不登校や引きこもり、いじめや虐待、自殺など、「家庭教育」と「学校教育」がバランス良く「人間関係を学ぶ場」として機能していた時代には、その解決のための途が用意されていた。社会や経済、産業の発展は、必ずしも人間の成長の速度とは一致していないのである。

人間の行動の動機となり得るものの中で、大きなものの一つとして「ノスタルジー」がよく挙げられる。望郷の念や、過ぎ去った昔を懐かしむ心を指すが、かつてのやり方を持ってきても、本質的な問題の解決にはならない。学校は教育環境の変化にどのように対応できるか。学校―地域―家庭が一体となって、「悩める心を持つ子どもたちに寄り添い、居場所を与えること」が求められている。

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上尾市にある聖学院大学は、11月3日の文化の日に、ヴェリタス祭(大学祭)のイベントとして、公開シンポジウム「児童・生徒・学生をとりまく教育環境の変化 学校―地域―家庭」(午後2時〜同3時半)をチャペルを会場に行います。参加無料。問い合わせは聖学院大学広報課。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=