埼玉新聞ロゴ

2016.10.4

市民社会とレジリエンス

高松和幸

獨協大学経済学部経営学科教授

高松和幸

たかまつ・かずゆき 57年生まれ。07年内閣府経済社会総合研究所マッチングギフト研究会委員長。07―10年埼玉県NPO・大学連絡会副会長。10―現在 埼玉県「ふるさと支援」再生事業に取り組む

■「うる」と「かう」

古くから日本人は、商取引のことを「うる」と「かう」と言ってきた。売り手は「得(う)る」つまり得をすること。買い手は「交(か)う」つまり品物と同価値と認めて交換するという考えである。1800年代米国のJ・R・Commonsはgoing concernを継続的商取引の意味で用いた。

つまり、収益は将来において期待される収益であり、この将来の期待に対して組織は、不断に前進 (going) する一個の活動体(concern) として、自らを組織化するというのである。

またgoing concernは制度と活動との複合体として理解され、人と人との活動(action) を架橋し (trans) 取り結ぶ最小の経済単位として取引(transaction)として理解されている。

翻って、取引においては生産者と消費者の関係も成り
立つが、日本人の持つ「経世在民」(経済が世のため人のためになる)は、ルールとして互いに売り手になる必要
を説く。それは商品価値を
評価する取引から、消費者はこのルールに反して、常に買い手にとなり、その人はいつまでも貧困から脱することはできなくなることを意味する。つまり脱貧困は何らかの生産者となることなのである。

■組織の収益価値

さて、日本人を取り巻く環境、就中、超高齢社会にあって健康で地域で活躍する場として、(一社)市民社会とレジリエンス研究所(通称:八王子子安こみゅカフェ)を立ち上げた。主眼としたことは、「健康長寿」である。地域包括ケアシステムを視野に入れた地域再生事業である。農作業や市民大学運営、講習会や勉強会など、コミュニティ維持のための活動を行っている。

新しい組織の誕生である。この組織を評価すると、善意価値(goodwill value)によって協働的意思を無形資産として評価し、そこに事業価値があり、それを組織価値というなら、「goodwill value=組織の収益価値―有形資産」と表現できる。

無形資産だから、それを直接に評価することはできない。組織の収益価値は、「組織の収益価値=純利益÷資本還元率」で計算できる。一般に、収益価値は株式市場で売買される株式の市価に反映されるものと同等である。組織の市場における価値を株価で評価することになるが、その実態は純利益を資本還元した金額と、この有形資産の取得原価との差額が、組織価値ということである。

しかして、新しい組織は生産者となり、健康長寿を貫くことで、その組織価値は高くなることは言うまでもない。こうした活動の基本視点について、拙著「市民社会とレジリエンス」(創成社)の中で展開した。今後、団体活動の一助になれば望外の喜びである。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=