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2016.10.13

半導体製造装置と中小企業

加藤秀雄

埼玉学園大学経済経営学部特任教授

加藤秀雄

かとう・ひでお 50年生まれ。法政大学工学部卒業、東京都商工指導所職員、九州国際大学教授、福井県立大学教授、大阪商業大学教授、埼玉大学教授を経て、現在埼玉大学名誉教授。専門は中小企業論。主な著書『日本産業と中小企業―海外生産と国内生産の行方』新評論、2011年。『外需時代の日本産業と中小企業―半導体製造装置産業と工作機械産業』新評論、15年。

■日本ユーザーの低迷

わが国の半導体製造装置産業は、1960年代以降に繰り広げられた日本半導体メーカーによる製造装置の国産化策の下で形成されてきた。その後、NEC、東芝、日立、富士通、三菱電機、松下、三洋、シャープ、ソニー、沖電気など、日本を代表する電機メーカーが半導体メーカーとして世界をリードしていくことになる。

しかし、現在では日本半導体メーカーに勢いがなくなり、国内生産は縮小し続けている。結果、90年代、日本国内の装置市場は、世界の5割近くを占めていたが、現在では1割前後に落ち込んでいる。

既に設備投資規模が突出している米インテル、韓国サムスン、台湾TSMCの3社が半導体製造の技術革新だけでなく、製造装置の開発に関しても大きな影響力を及ぼす時代に突入している。

そして微細化、大容量化に向けて半導体メーカーと装置メーカーが巨額な開発投資を投じなければならない現在、そうしたことのできるメーカーは、半導体メーカー、装置メーカー共に、少なくなってきている。

■寡占化する製造装置

結果、製造装置のうち、主要な数十機種を眺めると、その大半がシェア1位企業の競争力が高まり、独占までに行かなくとも寡占状態に突入していることが認められる。

かつては日本半導体メーカーごとに、装置メーカーが組織されるという、一種の系列的な取引関係がみられたが、そうした関係を現在ではほとんどみることができない。

しかし、そうした中においても、日本の装置メーカーは、海外半導体メーカーとの取引に積極的に踏み込み、今なお世界の半導体製造装置市場の3割から4割を供給し続けている。

■中小企業の発展可能性

では、日本半導体メーカーごとに組織されていた数多くの中小装置メーカーは、現在どのような状況に置かれているのであろうか。残念ながら取引先である日本半導体メーカーの低迷の影響を回避することができずに市場から去った中小装置メーカーは少なくない。

とはいえ、時代の困難を乗り越え、さまざまな装置市場において独自の存立基盤を形成している中小装置メーカーも少なくないことを忘れてはならない。

たとえ、最先端の主要装置が金額的にも量的にも大半
を占めようとも、それらの装置のみで半導体が生産できるほど単純ではなく、市場規模は小さくとも、周辺装置の開発製造は広く求められている。

また、半導体生産はコンピュータ、スマホ需要にみられる量産品のみならず、量的に少ない電力関係のパワー半導体、車用の各種制御用半導体など、特殊仕様の製造装置の開発製造も重要性を増している。

さらに、前世代(ウエハー200ミリ以前)の半導体工場の製造装置の改造、入れ替え需要に対する開発製造に取り組むことも中小装置メーカーの一つの発展可能性につながっている。

決して最先端や量産分野のみが、中小装置メーカーの発展分野でないことを、ここで改めて確認しておきたい。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=