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2016.10.25

地域デザインと住民負担

石川祐三

東京国際大学経済学部教授

石川祐三

いしかわ・ゆうぞう 47年生。明治大学大学院政治経済学研究科博士課程単位取得。鹿児島国際大学講師、助教授、教授、93〜94年ケンブリッジ大学在外研究員。01年より現職。日本財政学会、日本地方自治研究学会等。専攻:財政学。著書:『地方財政システムの研究』『租税の基礎研究』『地域財政の研究』等。

■インフラ整備の財源

台風シーズンがようやく終わろうとしている。日本の気象条件は変わったと感じて
いる人は多いのではないか。台風だけではない。地震や津波や山崩れなど、自然は人間の都合の良いようにはいかないし、本来は厳しいものである。

だからといって無策ではいられない。道路や橋、上下水道、電力設備といったさまざまなインフラは整備し続けなければならない。そのインフラの老朽化が言われ始めてすでに久しい。耐久性検査や補修は進んではいるが、決して十分ではない。その理由は技術をはじめ、いろいろあるが、根本的な理由は年間5兆円ともいわれる更新費用の確保が難しいことにある。

インフラの整備はまずは政府の仕事だから、その財源の中心は租税収入である。税収入は経済が元気ならば増え、経済が悪くなると減る。所得税も法人税も消費税もそうなる仕組みである。日本経済はここ十数年間、元気がなかった。近年は、経済政策の効果もあって、いくらか持ち直そうとしているが、まだ回復したなどとは言えない地方経済も多く、税収入も大きく増えるという状況にはない。

税収入が増えないことのほかに、人々の増税への抵抗感がある。不用意に増税提案などすれば、それを言った政治家や政党は大たたきされ、次の選挙では当選できず、政権政党はその座から滑り落ちかねない。財政支出の側に無駄がないわけではないから、支出削減が先であるという物言いが歓迎される。しかし、無駄を省いて出てくる財源などは最初からたかが知れている。これから(いや今すぐに)必要な財源を、事業再編で捻り出すなどはもとより無理がある。

■地域社会への責任感

ではどうすれば良いのか。ここは自らの責任と負担で、地域のインフラを充実させることではないだろうか。実際には、高速道路などいくつかの地域にまたがるインフラは多いし、国や県からの補助や援助が必要な場合は災害時などを含めて必ず生じるものである。だが、そうしたとき以外には、自前の財源で、その地域にとって使い勝手の良い、住んでいる人々に心地よい施設をデザインし、形成して公共サービスを提供することを基本とすべきである。言い古されたことであるが、地域社会への責任感をもう一度、地域住民が発揮することではないのだろうか。

自前の財源は地方税に限らない。料金や負担金、寄附金、ときには借入金も動員できるから、財源構成についても自らデザインすることができれば地域の自主性は促進されよう。首都圏内にある埼玉県では、東京に通う住民が多いのは朝夕の通勤ラッシュでも痛感できる。財源構成の現状では、住居地の公共サービス利益と住民負担の関連はわかりにくい。確かに公共サービスを支えているという感覚の下に「納得の住民負担」を増やすことが急務だと思われる。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=