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2016.11.1

コンテンツ産業の現状

山本重人

川口短期大学ビジネス実務学科准教授

山本重人

やまもと・しげと 滋賀大学経済学部卒。立命館大学大学院経営学研究科企業経営専攻博士課程後期課程修了。博士(経営学)。立命館大学経営学部助手、川口短期大学専任講師を経て2015年4月から現職。専門は経営組織論、コンテンツビジネス。主な著書に『組織能力と企業経営』(共著、晃洋書房)など。

■世界第二の市場規模

近年、政府は成長産業としてコンテンツ産業に注目している。「デジタルコンテンツ白書2016」によれば、コンテンツ産業とは、映画・アニメ・ゲーム・書籍・音楽等の制作・流通を担う産業の総称であり、わが国におけるその市場規模は12兆円である。これは米国に次ぐ世界第二の規模である。

また「博報堂Global HABIT 2015」の調査によれば、例えば香港では「よく見る(国の)アニメ・マンガ」として79%の人が日本を挙げている。「好きなドラマ」においても、50%が日本のドラマを挙げている。「よく聴く音楽」では46%が日本を、「好きな映画」では36%が日本を挙げている。台湾でも同様の傾向にある。

欧米に目を向ければ、パリではマンガ・アニメ・ゲーム・音楽などを含めた日本文化の総合博覧会であるジャパン・エキスポが、米国ではアニメイベントのアニメ・エキスポやゲーム関連の見本市であるE3が開催され、わが国のコンテンツは海外においても関心を持たれている。

埼玉県内に目を向けると、アニメ「らき☆すた」の舞台である鷲宮神社には「聖地巡礼」と称してファンが訪れ、記念撮影をする姿などがメディアを通じて報じられている。県は、県内の観光地に外国からの観光客を誘致するため、観光PRアニメを制作し、YouTubeにて配信を行っている。地域の町おこしおよび観光事業のためにコンテンツを利用していく流れは近年全国に広がっている。

■プロデューサーの育成

このように、観光産業や地方活性化策からも注目されているコンテンツ産業ではあるが、政府は海外の需要に十分に応えられていない現状を特に課題としている。韓国や中国が政府主導のもとでコンテンツ振興政策を推進し、急速に国際競争力を強化しつつある中、わが国もコンテンツ産業のビジネスの基盤整備を行っていく必要がある。

特に東アジア諸国が競争力を増している背景には、高度人材育成政策の重視があるとされる。具体的にいうと「プロデューサー」の育成である。業界で使い分けられる「製作(商品を作ること)」と「制作(作品を作ること)」の言葉でいうと、プロデューサーは「製作」の総責任者である。例えば映画プロデューサーの役割とは、監督に芸術を発揮してもらい、面白い映画(作品)を作ってもらう一方で、映画製作を続けていくためのビジネス的な成功(商品)も目指すことが求められている。

プロデューサーには、面白くてかつ売れるものを作ることが求められている。しかし、芸術性を含むことは、ビジネス上の成功を難しくする。平たく言えば、面白いかどうかは人の価値観によって違っており、このことは収益がどれくらい見込めるのかを原理的に不可能にする。面白くても結果として売れなかった場合もあり、コンテンツという財は厄介な側面を持っている。

実は、海外展開を考える以前に国内での成功モデルを確立するのも難しい段階にあるのが実情なのである。そして、この分野の研究蓄積がほとんどないのもこうした理由からなのである。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=