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2016.11.10

デフレ不況の克服へ

相沢幸悦

埼玉学園大学経済経営学部教授

相沢幸悦

あいざわ・こうえつ 50年生まれ。慶応義塾大学大学院博士後期課程修了後、埼玉大学経済学部教授などを経て、現在、埼玉学園大学経済経営学部教授、川口短期大学ビジネス実務学科客員教授、経済学博士。著書は「日本銀行の敗北」(日本経済評論社、16年)など。

リオ五輪閉会式、わが安倍宰相が、スーパーマリオに扮して登場すると内閣支持率が急上昇(じきに戻ったが)する日本の怪!

安倍政権が登場してはや4年。久々の長期政権だった小泉政権以来だ。

■安倍政権への期待

小泉政権同様、安倍政権も高い支持率を維持している。小泉政権は構造改革で強い経済を構築すると訴えた。だが、そのほころびが見え始めると、自民党総裁任期延長を断った。首相を続けるとほころびの責任を問われるからだろうが、これもある種の「見識」か?

かたや安倍首相は、超円高・デフレ不況を克服した「名」宰相として、来る東京五輪・パラリンピックまで首相を続けることを求められているという。本人は望んでいないようだが、自民党総裁任期が延長されると、総理在任9年、歴代最長の総理大臣誕生となる。

私はアベノミクスを批判してきた。だがデフレ不況が「終息」したかにみえ、株価が上昇し、雇用も改善、最近ではアベノミクスを批判しても虚しい。

ただ、黒田総裁率いる日銀だけは、2%物価安定目標未達成を総括的に検証し、事実上、「失敗」を認めている。岩田副総裁だけは国会で、「私の考え方も進化してきた」とわけの分からない証言をした。ならば安倍政権の支持率がなぜ高いかという検証も必要だろう。

アベノミクス批判をするうちに、ナチス・ドイツのそれと奇妙に似ていることに気付いた(ナチス礼賛の意図はない)。それまでの政治的混乱(ドイツは小党分立による政治的混乱、日本は旧民主党の稚拙な政権運営)を克服し、未曾有の大不況(29年世界恐慌と超円高・デフレ不況)から離脱させ、見事に経済を立て直した。日独ともに公共投資を大々的に行う。

中央銀行(ライヒス・バンクと日銀)を支配下に置いて、経済政策を遂行し、オリンピック(ベルリンと東京)を国威発揚に大々的に活用する。日独ともに、国民のためにある程度の福祉充実を図るとともに、労働者への多少の配慮を行った。

このようにみると、強い経済を創って強大な国家を構築する点で、安倍政権はナチスの手法を踏襲したのではないかと思えてしまう。もちろん、ドイツの帰結は世界戦争への突入であり、敗戦・帝国の滅亡であった。

■日本経済の行方は

安倍首相の政治的信念は、アメリカから押し付けられた憲法の改正である。そのために超円高・デフレ不況の克服による高い支持率が不可欠である。

日銀に支持率上昇という使命を押し付けられた結果、市場から国債消滅、長期金利と株価の統制、マイナス金利など深刻な弊害が噴出している。だが、経済が政治的野望の「手段」になり下がっているので、それは仕方がないのだろう。

経済の国家統制と五輪景気で、安倍政権の支持率は下落しないので、悲願の憲法改正を実現できるだろう。懸念されるのは、健全経済の崩壊やインフレの高進などである。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=