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2016.11.22

日本経済の再生には

大岩雄次郎

東京国際大学経済学部教授

大岩雄次郎

おおいわ・ゆうじろう 慶応義塾大学大学院経済学研究博士課程単位取得満期退学。東京国際大学専任講師、助教授を経て、現職。

■増加する社会保障費

現在の社会保障給付費(予算ベース)は、2016年度で約118兆円とGDPの約23%を占めている。そのうち年金が57兆円、医療が38兆円、介護が10兆円、残りの約12兆円が生活保護、障害者福祉、児童福祉、労働関係等の給付となっている。

今後、高齢化とともに社会保障給付費は増加し、特に団塊の世代が75歳になり、医療・介護の需要が増えるとされる25年には40兆円近く増加し、約150兆円、経済成長次第ではGDPの30%以上に達すると見込まれる。

既に財政赤字は巨額で(16年度一般会計の歳入のうち34兆円超(35・6%)を公債に依存)、25年までに新たに発生する40兆円の確保が大きな問題になった。すなわち、わが国は、国家財政と社会保障の持続性に大きなリスクを抱えていることは誰の目にも明らかである。

■財源の消費増税先送り

2000年代前半の各改革でも基礎年金、介護保険、後期高齢者医療制度の半分の財源を消費税でまかなうことが想定されたが、増税を先延ばし、国債等によって、その場しのぎの政策を繰り返した。本来は2000年代前半に行うべき社会保障制度の最小限の財源確保もなされなかった。ようやく12年に社会保障制度維持のためには消費増税が不可欠であることを認識し、民主党、自民党、公明党の三党合意によって社会保障と税の一体改革が決定された。

それにもかかわらず、16年6月1日、安倍首相は民主党政権から引き継いだ消費税率10%への引き上げを平成31年10月まで、さらに2年半延期することを表明した。消費税率引き上げの延期表明は約1年半ぶり2回目である。しかし、消費税増税による景気後退のリスクは現世代が負うべきもので、将来世代に先送りするいかなる理由もない。

■無責任な体質を改めよ

社会保障・税一体改革の理念は、将来世代に負担を先送りせず受益と負担の均衡を図ることにある。民主・自民・公明三党により議員立法として提出され、12年6月に成立した社会保障制度改革推進法は、「安定した財源を確保しつつ受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図る」とともに、「国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点等から、社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとする」と規定している。

さらに、同法に基づき設置された社会保障制度改革国民会議は、13年8月に公表した報告書において、「現在の世代が享受する社会保障給付について、給付に見合った負担を確保せず、その負担を将来の社会を支える世代に先送ることは、財政健全化の観点のみならず、社会保障の持続可能性や世代間の公平の観点からも大きな問題であり、速やかに解消し、将来の社会を支える世代の負担ができる限り少なくなるようにする必要がある」と指摘している。 

一日でも早く、この無責任な先送り体質を改めることが日本経済の再生の道である。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=