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2016.12.22

原油価格と日本経済

湯浅由一

駿河台大学経済学部教授

村上純子

ゆあさ・よしかず 58年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位修得、満期退学。90年駿河台大学経済学部専任講師。助教授を経て、07年教授に昇任。95年ボストン大学客員研究員。経済経営学部教務委員長。専門分野は金融論。主要著書、『入門証券市場論(第3版補訂)』(共著)有斐閣ブックス

 ■「火加減」

 2016年の年末であり、この1年を振り返る。

 グローバル化した世界経済の中で、日本一国の、しかも日銀の金融政策だけで景気を意図通りにできるとは限らない。各国の財政金融政策スタンスと予期せぬ出来事の影響を受けるのが現実である。また、金融政策の期待された効果について万人が喜ぶということはないという厄介な問題がある。

 例えば、市場金利を低下させる政策の採用によってメリットを得る人がいる一方で、デメリットを被る人が確実に出現してしまう。住宅ローンの借り換えを行うことによって負担減を享受できる人がいる一方で、年金生活者などの資産運用者には好ましくない環境となるのである。金利の引き上げという場合でも、利益を得る人と正反対に不利益を被る人が出現してしまう。

 ではどうすればよいのか?

 その答えは「火加減」である。経済全体のバランスを考慮することが肝心となる。おいしい「卵焼き」を作るための火加減である。強火でも弱火でもない、おいしい卵焼きを作るのに求められる適度な火加減が大事ということになる。これが中央銀行の課題である。

 ■15年ぶりの協調減産

 さて、16年の日本経済は13年から採用されたアベノミクス政策の4年目であったが、今後の見通しが不確かな状況にある。注視したいのは原油価格の動向である。

 今更言うまでもないことであるが、13年からの円安は原油価格水準と無関係ではない。10年後半以来、1バーレル=100ドル前後で推移していた指標原油のWTI(West Texas Intermediate)が14年6月から急激な下落を始め、半額以下にまで低下していた。

 原油価格は日本の貿易収支に影響する要因であり、相対的に高価格で購入する時期では、日本の支払い額が増加して貿易収支は赤字基調となる。この実需要因から円・ドルレートは円安基調となる。1ドル=80円台から15年6月には125円台へとなった大幅な円安は、日本の輸出企業の業績を確実に改善させるので日本株の上昇をもたらした。

 逆に原油価格が大幅に低下して日本からの支払いが縮小した局面では為替レートは1ドル=100円台へと円高基調に転じている。「円高と株安」のトレンドになるのが自然である。

 12月10日、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの非加盟国が、15年ぶりとなる協調減産で合意した。来年以降の世界経済に影響する出来事である。原油価格・日本の貿易収支・円ドルレート・株価に強い連動性(リンク)が存在するとすれば、原油価格の安定が日本経済のみならず、世界経済の安定にも寄与すると考えられる。極めて重要な要因であり、常に注視すべき経済指標のひとつである。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=