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2017.1.26

地域企業による知識創造

高垣行男

駿河台大学経済経営学部教授

村上純子

たかがき・ゆきお 1950年生まれ。徳島大学卒、国際大学大学院修了、東京大学大学院・博士(学術)。沖縄国際大学教授を経て、2000年より現職。専門は国際経営戦略。主な著書に、「経営戦略の理論と実践」(創成社)など。

 ■イノベーションが推進力

 私たちの生活に豊かさを与える経済発展はイノベーションが推進力になっている。イノベーションの概念はオーストリア出身の経済学者シュンペータによるところが多い。従来の製品、生産方式、販売先、仕入先などを新しいものに変化させ、新しい組織の実現などにより、経済が変化することを意味する。このような活動の多くは企業が行っており、中小企業よりも大企業が注目されてきた。

 ■壁に直面する大企業

 新製品を例にとると、従来は大企業が優秀な研究者や技術者を総合研究所などに多数抱えて自社開発で成功してきと言える。ところが、最近の日本の大企業によるイノベーションは、研究開発投資が高いレベルにあるにも関わらず大きな効果(収益性など)を出してはおらず、企業規模で収益性を比較しても規模が大きければ成果があるというわけでもない。新興経済圏の諸国の経済発展の影響もあって、大きな壁にぶつかっていると言える。

 ■新たな取り組み

 対応策として、外部の力を活用したり、自社で使っていない特許などを他社に使用させたりすることで、革新的なビジネスモデルなどを生み出し、利益を得る考え方を導入しようとしている。オープン・イノベーションと呼ばれ米国などでは成果が出てきており日本の大企業も取り組みつつある。ただ、大企業による成果向上が顕在化するには時間がかかる。

 ■地域の中小企業への期待

 ところで中小企業は企業数が圧倒的に多く(約99・7%)、特に地域に立地する企業間でのイノベーションに期待したい。中小企業は企業規模が小さいために一般的に経営資源は限られている。『中小企業白書(2015)』では「小規模の壁」と表現されている。

 しかし優位性もあり、特定分野での優れた技術、経営者の企業家精神、意思決定の速さなどがある。複数の中小企業の知恵を合わせて知識創造が起きればイノベーションにつながる。昨年、首都圏で実施した調査では、「投資資金」「場」「リーダーシップ」「信頼」の4項目が成功要因と考えられる。詳しくは今春発刊予定の『地域企業の知識創造』(創成社)に書いたところだ。

 ■モデルは埼玉から

 首都圏の中でも埼玉県は地場産業とともに機械・電気・電子関連等々の企業群が多く集積しており、活力に満ちている中小企業が多く存在している。大消費地との隣接地域であることから消費者のニーズを把握しやすい地域でもある。隣接地域の企業間の相互協力によって知識創造が起き、イノベーションによる地域経済が発展することを期待しています。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=