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2017.1.31

トランプ政権ついに誕生

相沢幸悦

川口短期大学ビジネス実務学科客員教授

村上純子

あいざわ・こうえつ 1950年生まれ。慶応義塾大学大学院博士後期課程修了後、日本証券経済研究所主任研究員、長崎大学・埼玉大学経済学部教授を経て、現在、埼玉学園大学経済経営学部教授、川口短期大学ビジネス実務学科客員教授、経済学博士。著書は、「憲法劣化の不経済学」(日本経済評論社)、「日本銀行の敗北」(同)

 1月20日、アメリカでほとんどの人が予想もしなかったトランプ大統領が誕生した。政治家はもちろん世界中の人々が、アメリカは何処にいくのかと不安にかられている。

 ■アメリカ・ファースト

 トランプ大統領は就任するやアメリカ・ファーストを掲げて、TPP(環太平洋経済連携協定)の破棄、メキシコ国境への壁の建設などの大統領令に署名した。

 貿易については多国間協定ではなく二国間で交渉し、アメリカに有利なようにもっていく。メキシコからの不法移民を入国させないために国境に壁を建設し、費用をメキシコに支払わせるなどである。

 アメリカで雇用を守るために、アメリカを見捨ててメキシコに工場建設をすれば、メキシコから輸入する時に高額の関税をかけると息巻く。そうしたら、名だたる自動車会社がアメリカに工場建設をすると大統領の軍門に下る。

 ■日本への風当たり

 トランプ大統領は、巨額の貿易赤字に我慢ができない。日本は、見たこともない大きな船で何十万台の自動車をアメリカに売っているのに、関税をかけて米車を買わないという。

 いずれ、トランプ当選以来の円安に食ってかかる。円高へ。

 しかし、米大統領がどれだけわめいても対日赤字は減らない。問題は、関税をかけてないのに米車が日本で売れないことだ。ベンツやBMWなど欧州車は売れている。アメリカは、日本で売れる車を作っていないということなのである。

 安倍首相は、米大統領にTPPと自由貿易の重要性を説得するという。天下の米大統領に、である。偉そうに言うんだったら、会いに来る前に、真珠湾で「だまし討ち」を謝罪してこいと言われかねない。

 自由貿易というなら、コメや牛肉など食料品の関税をゼロにし、非関税障壁も撤廃しろ、さもなければ、日本車輸入に高関税をかけるぞといわれる。これが二国間協議だ。

 ■時代錯誤の保護主義

 米大統領は、時代錯誤の重商主義・保護主義に凝り固まり、輸出を増やして輸入を減らし、貿易黒字を貯め込めば国は豊かになると信じている。

 富は貿易黒字ではなく労働だと、アダム・スミスが重商主義を厳しく批判したし、それぞれの国がその国で最も生産性の高い財の生産に特化して輸出すれば、貿易でそれぞれの国が豊かになることをリカードが明らかにした。

 確かに、グローバル化は行き過ぎた面があったが、世界の経済格差がほんの少しではあるが縮まってきたこともまた事実である。ただ、アメリカでは広がった。

 保護主義は歴史的に破綻している。アメリカ・ファーストということは、他国は第二以下ということ。自国通貨安誘導がIMF協定で禁止されているのは、輸出ばかりして輸入しない近隣窮乏化政策だからだ。

 アメリカが関税をかければ、相手国も関税をかける。為替安競争にもなる。これは、1929年世界恐慌後に各国が行ったことで、帰結は世界戦争であった。

 トランプ政権の命運はいずれ尽きるだろう。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=