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2017.2.7

女性の潜在労働力の活用

高畑純一郎

独協大学経済学部准教授

高畑純一郎

たかはた・じゅんいちろう 1980年生まれ。一橋大学経済学部卒。博士(経済学・一橋大学)。応用経済専攻。財務省財務総合政策研究所、独立行政法人国際協力機構JICA研究所等を経て2012年獨協大学経済学部専任講師、16年同准教授。専門は公共経済学。

■専業主婦への期待

近年、所得税制の抜本的な改革が検討されては見送られ、配偶者控除については、パートで働く主婦の年収要件が103万円から150万円程度への緩和という方針にとどまった。夫婦控除も改革の候補として挙がったが、実際にはどのような制度が望ましいのであろうか。

人口減少が進行しつつある日本の経済では、新たに労働力人口になる若者は少なく、引退した高齢者や、出産・育児のために退職した専業主婦、外国人研修生などの労働力の活用や、ロボットへの代替が検討されている。そんな中で、パート労働者として専業主婦に期待が集まっている。

これまでも配偶者控除のしくみがあり、専業主婦は103万円の壁を超えないように労働供給を行うことによって、夫側の所得税制で優遇されてきた。これは、パート労働をしない専業主婦のいる同じ収入の家計や、フルタイムの共働きをしている同じ収入の家計と比較して、税負担は小さいことを意味する。

もちろん、日本の所得税制は完全に世帯の収入に課税されているわけではなく、原則として個人単位で課税されており、世帯の所得が同じであるからといって同じ税負担となるとは限らない。ただし、配偶者控除の制度については、専業主婦の収入によって夫の課税額が決まるという意味で、部分的に世帯単位での課税となっている側面がある。これは、社会保障制度における第3号被保険者のしくみにも当てはまる。

■抜本的改革が必要

女性の潜在的労働力の活用というのは、配偶者控除の制度のために103万円の壁で労働供給を抑えているところを、103万円の壁を超えて、もっと働けるパート労働者にはもっと働いてもらおうという趣旨であろう。そのためには、従来の制度を廃止することで解決すると考えられる。

ところが、従来の制度を廃止すると、パート労働をしない専業主婦のいる同じ収入の家計にとっては、そうでない同じ年収の家計と比べて税負担は大きくなる。これは基礎控除や給与所得控除のためである。現行の制度では、パートなどの給与所得者は103万円まで非課税となるが、パート労働をしていない専業主婦はこの恩恵が受けられず、世帯間で比較すると不公平となってしまう。

このように、本来は所得税では個人間の公平性さえ満たされていれば問題ないが、配偶者控除には世帯に対する課税の要素が含まれているため、世帯間での公平性も絡んで複雑な問題となっている。

今後は、専業主婦であるパート労働者の収入が150万円までは、夫に配偶者控除を認めるという制度にすることになっている。特にパート労働を150万円ぎりぎりまでする世帯に恩恵が大きいような制度になってしまっており、世帯の形による不公平さは拡大している。配偶者控除制度だけでなく、社会保障制度の第3号被保険者のしくみの改革まで視野に入れた、所得税制と社会保障制度の抜本的な改革をするべき時期に差し掛かっている。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=