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2017.2.14

原発廃炉の時代へ突入

劉博

川口短期大学ビジネス実務学科准教授

劉博

りゅう・はく 1980年生まれ。埼玉大学経済学部卒。埼玉大学大学院経済科学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。専門は環境会計、経営財務論。主な著書に『信用格付けと会社財務・会計制度の新動向』(共著、泉文堂)など。

■ほとんどが稼働せず

近頃、「原発廃炉」関連のニュースや記事が頻繁に目にするようになりました。そもそも「原発廃炉」とは何か。本稿は、皆さまと一緒に「原発廃炉」の現状と課題について考えます。

「原発」とは、「原子力発電所」の略です。原子力発電は、ウラン(原子番号92の元素、元素記号はU)を核分裂させ、熱エネルギーを作り出し、水を沸かして蒸気の力でタービンを回転させて発電する方法です。安定的な電気供給、少ない環境負荷、安い発電コスト、の三つが原発のメリットと言われ、1966年に、日本で初めての商業用原子力発電所「東海発電所」が運転開始して以来、原発は日本経済を支える重要なベースロード電源として役割を果たしてきました。

2016年時点、日本では建設中のものを除いて48基の原発があり、合計4426万キロワットの発電能力を有しています。しかし、そのほとんどは、いま稼動していません。安全性の確保ができないからです。

■21・5兆円の費用

11年3月11日、東北地方太平洋沖にマグニチュード9・0の大地震が起こりました。東日本大震災です。東京電力福島第1原子力発電所では、地震と津波により運転中の1号機〜3号機が炉心冷却に失敗し、炉心損傷・放射性物質漏えい事故が起こりました。この事故は、国際原子力事象評価尺度 (INES) において、最も深刻なレベル7に分類されています。

現在、東京電力が負う原子力損害賠償、放射線物質除染および原発廃炉などに関わる費用が、21・5兆円という巨額に達し、13年時点に経済産業省が試算した11兆円を大幅に超過しました。そのうち、原発廃炉に関わる費用は、旧来の2兆円試算から4倍に膨らみ、8兆円になりました。この廃炉費用は、原則として東京電力が負担しますが、実質、電気料金に上乗せされ、幅広い国民負担でまかなうことになります。

そもそも「廃炉」とは何か。「廃炉」とは、原子力発電施設から燃料を取り出して安全貯蔵し、原子力発電施設を解体・処分することです。東京電力の作業ロードマップによると、福島第1原発の廃炉は約30〜40年かかる見込みです。

17年現在、廃炉作業は第2段階の「使用済燃料の取り出し」に入りましたが、事故で「溶けて固まった燃料(デブリ)」の取り出しや、壊れた原子力発電施設の解体・処分という最も困難な第3段階にまだたどり着いていません。試算された廃炉費用8兆円の金額も、さらに膨れ上がる可能性があるということになります。

■待ち受ける高い壁

日本の原子力発電施設は、原則として運転開始後40年で廃炉になります。厳しい審査に合格した場合のみ、「1回に限り最長20年の延長」が特例として認められます。現在、日本の原発の3分の2以上は、1970〜80年代に運転開始したものです。つまり、2030年ごろまでに、日本にある48基の原発のうち6割以上(約30基)が寿命を迎えることになり、廃炉しなければならないということになります。

「原発廃炉の時代」への突入です。今後、原発廃炉に関わる巨額の費用負担の問題はもちろん、廃炉したときに出る放射性廃棄物をどこに処分するかという高い壁にもぶち当たります。原発のメリットといわれる「少ない環境負荷」「安い発電コスト」について、いま私たちは、「安全で豊かで持続可能な社会の実現」の視点に立ち、改めて検証しなければなりません。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=