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2017.2.28

ふるさと納税と自治体の対応

本多正樹

東京国際大学経済学部教授

本多正樹

ほんだ・まさき 1980年東京大学法学部卒。同年日本銀行入行。金融研究所、業務局などの勤務を経て04年京都大学法学研究科教授、07年から現職。専門は金融法

 ■納税者にはプラス

 ふるさと納税という制度をご存知だろうか。市町村、都道府県などの地方自治体に寄付をすると、寄付額のうち2千円を超える部分について、一定の上限まで原則として所得税・個人住民税から全額が控除されるという制度である。

 この制度では、B県C市に住んでいるAさんがD市に寄付をすると、D市の収入が寄付金額分増える一方、B県とC市の住民税収入と国の所得税収入が減ることになる。D市にとっては新たな収入源であり、それを地方創生に生かそうというわけである。

 Aさん個人にとっては、D市に対する寄付を通じて応援することになるが、実質的な負担は自己負担額2千円で済み、それを超える部分は納税額が減るので、懐が痛むわけではない。むしろ、寄付を受けたD市から謝礼として地元の特産品などの返礼品が送られるので、その分プラスとなる。

 ふるさと納税と呼ばれているのは、例えば都会に出てきて働いている人が自分を育んでくれたふるさとに対し、自分の意思でいくらかでも納税するのと同じ効果があるからだが、寄付先の自治体は生まれ育った市町村である必要はない。

 各自治体は、受け入れる寄付金を増やすために競って魅力的な返礼品を用意する。どの自治体がどのような返礼品を用意しているかを検索できるインターネットのサイトが複数あって、人気ランキングも発表されている。ほとんどのサイトでは、寄付の申し込みのほか、寄付金の支払いの手続まで行うことができる。

 ■収支マイナスの自治体も

 総務省のふるさと納税ポータルサイトは、ふるさと納税の実情を知る上で興味深い。現況調査として、寄付金の受入額と税額控除額のそれぞれについて自治体ごとの実績が掲載されており、例えば、埼玉県の自治体合計で、平成27年度に14・6億円の受け入れがあった一方、平成27年暦年分の在住者の住民税の控除が52・5億円であったといったことも分かる。

 さらに、調査に当たっての個別の調査票が全て掲載され、自治体の生の声が分かる。収支がマイナスの自治体からは、返礼品目当ての寄付が中心であるのが現状であり、制度の趣旨に反するのではないかといった意見も出されている。また、寄付金の受け入れにせよ、税金の控除にせよ、そのための事務処理に手間とお金がかかることもうかがえる。

 この制度にはいくつかの問題があるのは確かであろうが、納税者に選択の道を与える意味ではよい制度だと思う。本紙では「平成28年の深谷市の寄付金受け入れが県内首位だった鶴ケ島市を上回り、県内トップに立った公算が大きい」と報じられる一方で、「所沢市は来年度から返礼品を廃止する」ことも報じられている。

 所沢市の対応も合理的な選択の一つであろう。また、寄付金の獲得に頑張るとしても、返礼品だけでなく寄付金の使途や情報発信に工夫を凝らすことが重要である。そうは言っても納税する側からすると、やはりカニや牛肉などに釣られて、その産地に寄付が流れてしまうのは人情なんですよね。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=