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2017.3.9

消極的につながる若者たち

小島弥生

埼玉学園大学人間学部准教授

小島弥生

こじま・やよい 71年生まれ。東京都立大学人文学部卒。東京都立大学大学院博士課程単位取得満期退学。修士(心理学)。立正大学助手、埼玉学園大学講師を経て、08年4月から現職。主な著書に『入門! 産業社会心理学』(共著、北樹出版)など。

 ■気軽に連絡可能な世代

 デジタルネイティブという言葉がある。その詳細については議論があるが、総じて生活の中で自然にインターネットを利用する世代を指す言葉である。日本では90年代半ばにビジネスの現場でインターネットの活用が本格化してから約20年が経った。つまり、生まれた時からインターネットが当たり前のように存在する世代が成人に至っている。

 インターネットに加え、スマートフォンなどの持ち運び可能な通信機器の普及に伴い、若い世代のコミュニケーションの形は大きく変化した。20年前の高校生が夜、友人と連絡を取るならば自宅に電話をするのが一般的であり、電話に出た友人の家族に自分の名を伝えていた。必然的に親は自分の子どもの交友関係を把握できる環境にあった。

 しかし、現代では高校生同士がさまざまなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用して直接連絡を取り合える。電話だけではなく、メールのような文字、あるいは動画や写真のやりとりも可能である。子どもたちは親を介在させることなく自由にコミュニケーションをとることができ、親の側からは子どもの交友関係を把握しづらいともいえる。

 ■消極的につながる世代

 このように現代の青年たちは友人と気軽に連絡が取りあえる。しかし、形は変化したものの、そのコミュニケーションのあり方は実は以前とそれほど変わっていないように思われる。

 筆者は昨年4月、大学生を対象にLINE利用に関するアンケート調査を実施した。なお、LINEはSNSとは異なるという議論もあるが、この調査では総務省の情報通信白書にならいSNSの一種とみなしている。有効回答者411人の実に99パーセントがLINEを利用しており、その多くは高校入学前後に利用を開始し、きっかけとして「友人から招待されたので」という理由が6割超を占めていた。

 興味深いのは、新たに知り合う人とLINEの連絡先をどのタイミングで交換するかという問いへの回答である。性格傾向として「人から嫌われたくない欲求」の強い人ほど「知り合った直後にまず交換する」と回答している。嫌われたくないのであれば相手の人柄を見定めてから連絡を取り合おうと考えそうなものだが、彼らはむしろ積極的に相手とのつながりを持とうとする。

 この姿勢は実は90年代の若者と同質なのである。友人関係には深く互いの内面を知り合おうとする関係の他に、互いに深入りして傷つけあう可能性を懸念して表面的な付き合いに終始する関係も存在し、後者の関係性は90年代に多くなってきたという研究知見がある。「人から嫌われたくない」青年たちは、表面的なつながりを求め、むしろ積極的に互いの連絡先を交換する。いつでもコミュニケーションが可能な世代にとっては、消極的なつながりを維持する姿勢を互いに見せ合うことがコミュニケーションのあり方として重要なのであろう。

=埼玉新聞経済面 県内大学発「経世済民」=