埼玉の公示地価、住宅と商業地が2年ぶり上昇 県南が中心 再開発事業の地域、マンション競合の地域も上昇
国土交通省は22日、2022年1月1日時点の県内公示地価を発表した。住宅地が平均0・5%、商業地が0・2%とそれぞれ上昇。いずれも2年ぶりに値上がりに転じた。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で下落したが、感染緩和による経済活動の持ち直しを背景に土地取引が回復基調で、県南部を中心に上昇地点が増えた。
比較可能な地点のうち、住宅地で値上がりした地点数は470で、21年の95から増。商業地は83で、21年の7から大幅に増加した。
不動産鑑定士の三田和巳氏は、上昇をコロナ禍からの景気の持ち直しを一因に挙げた。その上で「駅徒歩圏内の繁華性のある商業地など、日常生活に必要な店舗などの需要を対象とする地域で上昇地点が増えた。再開発事業での進展期待、マンションが競合する地域でも上昇地点がみられる」と分析した。ただ飲食店の多い繁華街の商業地の一部地域ではいまだに落ち込んでいるという。
住宅地の市町村別変動率は、21年は上昇が3自治体にとどまるも、22年は22自治体に増えた。少子高齢化、人口流出が続く秩父地域や県北部では一部を除き下落が止まらない。住宅地の上昇率は上位10地点中、9地点がさいたま市内だった。トップは同市緑区美園5丁目36番29の5・0%で、埼玉高速鉄道の始発駅や大型商業施設が近くにあることが人気を集める。
最高価格は6年連続でさいたま市浦和区高砂2の2の6で、1平方メートル当たり101万円だった。
商業地の上昇率は上位10地点全てがさいたま市内で、大半がJR大宮駅や浦和駅の周辺。8地点が下落から上昇に転じた。トップは同市大宮区仲町1丁目37番1外の3・4%で、前年のマイナス1・9%からプラスとなった。大宮駅周辺は交通の要衝を背景に都市再生緊急整備地域に指定され各種開発が進行。同駅東口の複合施設「大宮門街(かどまち)」が4月から本格稼働することなどが上昇に寄与した。
ただ同施設の近隣でコロナ禍の影響が深刻な飲食業の店舗が多い同区仲町1丁目77番1はマイナス2・2%。前年に県内最大の下落率の同5・6%からマイナス幅は縮小も、時短営業や休業などコロナ禍の影響が残った。
浦和駅周辺は景況感の改善で、店舗やマンション用地の需要がさらに高まり、上昇に転じる地点がみられた。
価格上位10地点は同市7地点、川口市が3地点。大宮区桜木町1丁目8番1が31年連続で最高価格の、1平方メートル当たり357万円だった。
工業地は県全体で2・4%上昇(前年は1・6%上昇)。上昇率の最大は首都高川口線からも近い川口市領家5の6の37で、4・7%上昇した。東京外郭環状道路(外環道)周辺も上昇し、三郷市や戸田市の地域で4%台の伸びを示した。
今後の見通しについて三田氏は「新型コロナの影響が続く中、国内長期金利が米国の金利の上昇、原燃料費の高騰、ウクライナ情勢の余波で上昇傾向にある。想定外の株価変動もあり、先行きは不透明」と指摘した。