埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(2)】倉沢建設・倉沢延寿社長、社屋に込める技術の粋
県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。
■倉沢建設(川越市)倉沢延寿社長
壁、床、棚、机に張り巡らされた木材が醸し出す自然な温かみ。今年1月に完成したばかりの新社屋は、自分たちが世の中に広めたい技術の粋を詰め込んだ、正に「モデルビル」となった。「大手ゼネコンだからできる、中小企業にできるわけがないと言われる。だからこれを造った」。一級建築士で宅建士の倉沢延寿社長(51)は力を込める。
特徴は大きく分けて二つ。一つは省エネと創エネによるゼロエネルギービル(ZEB)。広く普及した太陽光だけではなく地下水からの地中熱で空調熱源を賄う。もう一つはCLT(直交集成板)と呼ばれる強度の高い木材の活用。鉄骨との併用で耐震性向上を図る。
いずれも脱炭素化社会やSDGs(持続可能な開発目標)に貢献する新しい工法として注目を浴びる。「大手しかやっていないものを中小が作って中小に普及させていく」。そのために第三者認証制度を取得し特許も出願した。
耐震を意識したのは、東日本大震災直後に被災地で見た工場の姿から。建物の構造は残っていたが、内装や設備は大きく壊れていた。「これでは職場がなくなる。人の命に加えて事業を守らないといけない」。取引先の中小企業を念頭に、誰でも取り組める最新技術の応用と、時流に乗った商品開発を目指してきた。
2011年に父寿朗さんから事業を承継したが、18年に経営の失敗が表面化。助けになったのが同友会の教えだった。飲食チェーン「サイゼリヤ」創業者で千葉同友会市川浦安支部の正垣泰彦氏から学び、経営理念の刷新や社員教育に取り組んだ。「企業の目的は世の中の役に立つこと。私たちの建築で困っている人を助けたい」。建物と同じ揺るがぬ理念が会社の支えだ。