埼玉新聞

 

シェア98%! 「一生の宝」にじまず、歪まず 小川和紙に特化、埼玉県立高の卒業証書支える「ヤマトヤ印刷」

  • 今では貴重な手差し印刷機と吉田耕作社長=埼玉県小川町増尾のヤマトヤ印刷

    今では貴重な手差し印刷機と吉田耕作社長=埼玉県小川町増尾のヤマトヤ印刷

  • 今では貴重な手差し印刷機と吉田耕作社長=埼玉県小川町増尾のヤマトヤ印刷

 「小川和紙の産地」という地の利を生かし、和紙部門は名刺から始まりはがき、封筒、便箋、包装紙、卒業証書、表彰状などに印刷。中でも埼玉県内の県立高校の卒業証書シェアは約98%を誇る。洋紙部門は印刷全般を扱う。

 吉田耕作代表取締役(57)の父・栄男(ひでお)さんが始めた。町内の親戚の印刷会社に務め、28歳の時に独立。まだ、オフセット印刷機のない時代、手差し印刷機1台を導入。当初は、はがき、封筒、選挙ポスターやビラなどの印刷が中心。法人化したのは1988年。昨年、「節目の35年」を迎えた。

 吉田社長によると、転機は65(昭和40)年前後。小川和紙を使った県立高校の卒業証書の注文があった。「溜(た)め漉(す)き」という技法で漉いた小川和紙で印刷することになった。従来のままでは、きれいに印刷するのは難しかった。このため和紙職人と「小川溜め漉き研究会」を立ち上げた。職人により、ばらつきのないように、のりの具合や割合、厚みなど、試行錯誤の末、統一。栄男さんも、きれいに印刷するためにインキの配合などを工夫した。「(印刷が)安定してきたのは4~5年してからだった」と話していた、という。

 今では県内の県立高校の卒業証書(А3判)の約98%を受注。印刷方法は昔の手差し印刷機による凸版印刷。かつては活字(鉛製)を、今は樹脂版を使用。「和紙の風合いに凹凸のある印刷が大変貴重とお客さまから喜ばれている」と話す。この凸版印刷は「全国でも数社しか技術・機械ともにないと思います。特にB3判に対応している印刷会社は、聞いたことがありません」と自負。計3台所有、歯車などの部品のメンテナンスは独自に行っている。

 また以前は、和紙の名刺のカラー印刷はできなかったがインクジェット印刷機を改造、カラー印刷を可能にした。

 吉田社長は「卒業証書は一生の宝、使っていただき誇りに思います。これからも小川和紙に特化した印刷を中心にやっていきたい」と結んだ。

■所在地

 ヤマトヤ印刷 小川町増尾187の1(電話0493・72・0701)

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