埼玉新聞

 

乳がん克服、ボディーフィットネス世界大会で日本人初V 浦和駒場体育館員の女性が輝く 復活して夢叶う

  • 「アーノルド・クラシック・アマチュア選手権」の優勝者トロフィーと優勝者のみに贈られるジャンパーを手にする秋山千香子さん=さいたま市浦和区

  • 今年の「アーノルド・クラシック・アマチュア選手権」に出場した時の秋山千香子さん(秋山さん提供)

 ボディーフィットネスの世界大会「アーノルド・クラシック・アマチュア選手権」でさいたま市浦和区の浦和駒場体育館員、秋山千香子さん(46)が日本人初の優勝に輝いた。乳がんで右胸を全て摘出した苦しみを乗り越え、「病と闘っている人たちの光になれれば」と話している。

 大会は世界80カ国以上から700人以上の競技者が集う世界で最も権威のあるコンテスト。3月初旬に米オハイオ州で行われた。

 ボディーフィットネスとの出合いは約15年前、東京・日本橋のデパートで販売員をしていた時、運動不足解消でジム通いを始めたことがきっかけ。学生時代はテニス部で元々「運動は好き」。次第にのめり込み、体を鍛え続けた。

 秋山さんには2度「つらい経験」がある。2007年、右胸にしこりを感じ乳がんと判明。早期治療で助かったが、09年に再発し右胸の全摘出手術を行った。ちょうどこの時、全国大会へ向けて練習を重ねていた時だった。

 「なんで私が」。入院中、病院のベッドで天井を見つめ自問自答の日々。しかし「いつか復活して今まで以上の姿を見せたい」。逆に闘争心に火がついたという。

 その後、体調も回復し練習を重ねて米国での世界大会に出場。17、18年と続けて4位入賞し、今年は日本人初の栄冠を手にした。「ハードなトレーニングを積み重ねて、ようやく夢がかなった」と秋山さんはうれしそうに振り返る。

 ボディーフィットネスはただ筋肉を鍛えるのではなく、バランスの取れた体形のほか、髪型や顔立ちなどボディービルと違って「女性らしさ」が審査対象になるという。

 健康的な姿を前面に出す競技として「病のことは非公表にしたほうが良い」と提言する人もいたそうだが、堂々と公表する。「病になってもあきらめなければ夢はかなう。私の姿で少しでも元気を与えられたら幸せですよ」。

 今年の夏、米ラスベガスで行われる世界最高峰の大会「ミスターオリンピア」で優勝するのが現在の大きな目標だ。「仲間や家族に元気な姿を見せたいですね」。もう一つの頂へ、秋山さんの挑戦は続く。

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