埼玉新聞

 

【東京ウオッチ】青空を見上げ発見する、新たな視点―奥渋谷の松濤美術館で表現の歴史たどる展覧会 いまのTokyoをつかむイベント情報(21日~29日)

  •  香月泰男「青の太陽」(1969年 山口県立美術館)(提供写真)

     香月泰男「青の太陽」(1969年 山口県立美術館)(提供写真)

  •  AKI INOMATA「昨日の空を思い出す」(2022年 作家蔵 ※参考図版)(提供写真)

     AKI INOMATA「昨日の空を思い出す」(2022年 作家蔵 ※参考図版)(提供写真)

  •  和光アネックスで提供されている「“Amazing”パフェ―秋の散歩道―」(提供写真)

     和光アネックスで提供されている「“Amazing”パフェ―秋の散歩道―」(提供写真)

  •  「舟遊・紅葉狩図」(住吉広定筆 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵)(提供写真)

     「舟遊・紅葉狩図」(住吉広定筆 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵)(提供写真)

  •  Ryu Itadaniさんによる「MARENCO TOKYO」(MADE IN BERLIN)(提供写真)

     Ryu Itadaniさんによる「MARENCO TOKYO」(MADE IN BERLIN)(提供写真)

  •  香月泰男「青の太陽」(1969年 山口県立美術館)(提供写真)
  •  AKI INOMATA「昨日の空を思い出す」(2022年 作家蔵 ※参考図版)(提供写真)
  •  和光アネックスで提供されている「“Amazing”パフェ―秋の散歩道―」(提供写真)
  •  「舟遊・紅葉狩図」(住吉広定筆 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵)(提供写真)
  •  Ryu Itadaniさんによる「MARENCO TOKYO」(MADE IN BERLIN)(提供写真)

 ◎今週の一推しイベント

 【21日(土)】

 ▽「空の発見」(~11月10日、渋谷区立松濤美術館)

 日本美術における空の表現の変遷に光をあてた展覧会が、奥渋谷の松濤で開催されている。

 近世になるまで、日本の美術家たちに空を描こうとする意識は希薄だったという。そのかわり障屏画には黄金地が描かれ、水墨画は余白で表した。近世以降は西洋絵画の影響も受け、洋風画、泥絵や浮世絵に青空が見られるようになる。

 本展では、江戸時代から現代までの作品約100点を展示。学芸員の平泉千枝さんは「日本人のものの見方の変化を追うとき、人の心が映し出される空というテーマが最も分かりやすいと思った」と企画の意図を話す。

 葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景 山下白雨」は、富士山と白い雲の上部に細く長く表れた青い色彩が空を意味しているという。「近世以前は大切なものだけに焦点を当てる見方だったが、江戸からはその先にある空を発見し始めた」と平泉さん。

 岸田劉生が夏空を描いた「窓外夏景」、緑とオレンジの雲を描き込んだ萬鉄五郎の「雲のある自画像」などの大正・明治時代の作品には、西洋画の写実性とは違った抽象的で独特な空と雲が現れる。中国東北部での軍事訓練の体験を、深い穴の底から見上げた空として表現した香月泰男の「青の太陽」は、過酷な状況に置かれた刹那的な気持ちを伝えている。

 現代アーティストたちの作品も。AKI INOMATAさんの映像作品は、デジタル技術によって雲の一瞬の姿をコップの中に捉え、その雲を飲むという行為を記録した。平泉さんは「戦争や災害時の作品と比べ、現代作品に見られる平和な青空と雲は、貴重な風景なのだと感じてほしい」と話した。

 

 ○そのほかのお薦めイベント

 【21日(土)】

 ▽「和光のティーサロンで季節のパフェ」(~10月31日、中央区・和光アネックス)

 秋の味覚をぜいたくに使用した華やかなパフェが、銀座で提供されている。

 特選の純熊本和栗「美玖里(みくり)」をふんだんに使用した新作「“Amazing”パフェ―秋の散歩道―」は、リンゴのキャラメルソテーやマロンアイスなどで味わいや食感のハーモニーを演出。秋の訪れを都心で感じられる一品だ。

 ▽「夏と秋の美学―鈴木其一と伊年印の優品とともに」(~10月20日、港区・根津美術館)

 日本では古くから、四季の中で春と秋が好まれたという。例えば平安時代の「古今和歌集」で春と秋の歌はそれぞれ百首を超え、夏と冬の各30首前後に水をあける。美術の世界でも桜と紅葉がとりわけめでられた。そんな伝統から一歩踏み出し、“夏と秋”をテーマに表現を発展させた近世の絵画に着目する展覧会が、青山で始まった。

 江戸琳派の絵師・鈴木其一(すずききいつ)の国指定重要文化財「夏秋渓流図屏風」や、琳派の祖・俵屋宗達にはじまる工房のトレードマーク「伊年印(いねんいん)」を押した名品「夏秋草図屏風」が会場を彩る。住吉広定が描いた2幅の絵は、夏に舟遊びを楽しむ公家の女性たちと、秋の紅葉狩りに出かけた男性貴族らが、鮮やかな対をなして目を楽します。

 長い酷暑の夏を経て、ようやく秋の訪れを感じる東京で、古人が見いだした季節感と美意識に触れてみたい。

 ▽「Ryu Itadani『Everyday Life “HERE”』」(~24日、渋谷区・アルフレックス東京)

 街の風景や植物を、独特の輪郭線と色彩で切りとるベルリン拠点のアーティストRyu Itadaniさんの作品を紹介する展覧会が、広尾で行われている。

 会場となる家具ブランド「アルフレックス ジャパン」のショールームでは、植物や身近な日用品を描いたプリント作品約200点を展開。同ブランドの代表的ソファの一つ「MARENCO(マレンコ)」や無垢材スツールに、それぞれ直接ペインティングした1点物のアートピースも必見だ。これらの作品と、家具や空間との調和が心地よい。

 銀座の「ポーラ ミュージアム アネックス」でも、視点を変えた展示「Everyday Life “THERE”」を同時開催(~23日)。遠くの景色を俯瞰した目線で描いた絵画作品など約30点を紹介している。二つの会場で、作家の織りなす鮮やかな世界を堪能したい。

 【27日(金)】

 ▽「なぜ日本は原発を止められないのか?」(16時、千代田区・日本文芸家協会)

 原発取材をライフワークとし丹念な調査を積み重ねているジャーナリスト青木美希さんの講演会が、紀尾井町で開かれる。

 原発を稼働し続けるということは、事故が起きる可能性も意味する。原発の歴史や東京電力福島第1原発事故を振り返りながら、広範な取材を基に原発を巡る問題を解き明かす。

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