<衆院選>LGBTQ当事者ら、法や環境整備求める 風向きに変化感じ「みんながもらえる権利欲しい」
多様性を認め合う社会の実現に向けて、性的少数者(LGBTQ)への理解が課題になっている。県内では、全国最多の18自治体で同性カップルを公的に認めるパートナーシップ制度を創設しているものの、自治体間で制度が統一されておらず、法的な保障もない。LGBTQの当事者らは「みんながもらえる権利が欲しい」と訴え、法律や環境の整備を求めている。
LGBTQへの支援活動を進める「レインボーさいたまの会」によると、全国で130自治体がパートナーシップ制度を導入。県内では、さいたま市を皮切りに、11日時点で18自治体が同様の制度を運用している。同団体は「制度を導入する先進自治体が増え、(対象を家族に拡大した)ファミリーシップ制度や相互自治体間利用などの選択肢も徐々に増えてきた」と説明する。
制度の普及によって「両親や親族を説得するためにも自治体が作成している宣誓カードがあると助かる」「公の場で認められてうれしい」などの意見が同団体に寄せられている一方、「パートナーが入院した時、病院が家族として本当に認めてくれるのか不安」といった声も。
川越市の会社員渡辺勇人さん(41)と会社員ゴードン・ヘイワードさん(41)は2020年5月、制度を導入している川越市からパートナーシップ宣誓書受領カードを受け取った。「気持ちの面で安心はあるかもしれないが、制度を活用すること自体はそれほど多くない」と口をそろえる。
一番役立った事例は、医療保険の申請手続き。「私が亡くなった場合、彼(ゴードンさん)を受取人として指定することができた」と渡辺さん。それでも、実効性に関しては疑問が残るという。「具合が悪くなった時、医療機関で使えるのか。突然の場合、カードだけで家族とみなされるのか」
同団体も「手術同意が可能になるなど、一定の安心感を持って暮らせるが、制度に法的な保障はない」と話す。カードを提示される側への周知も不可欠となり、制度を運用するための環境が十分整っていないのが現状だ。
LGBTQに対する理解が遅れている要因として、同団体は義務教育で学ぶ機会が少なく、現行法も異性愛を前提にしていることなどを理由に挙げ、多様性に対応した法整備の必要性を説く。
2人も「特別な権利が欲しいわけではなく、みんながもらえる権利が欲しい」(ゴードンさん)「法的に保障されることで悩む人も少しは減ると思う。もし理解のある社会だったら私もこんなに悩んでなかった」(渡辺さん)と訴える。
ただ、今回の衆院選では風向きの変化も感じている。各政党がさまざまな発信をする中、LGBTQ当事者らに向けた動画を視聴したゴードンさんは「日本の政治家が(性的少数者に関して)はっきり言うことはあまりなかったので、うれしかった」と笑顔を見せる。
2人は、正しい情報の発信がLGBTQへの興味や知るきっかけになると期待を寄せ、「(性的少数者が)話題に上らないぐらい当たり前な社会になってほしい」と望んだ。