女子高生が死亡、16歳の命が失われた事件…冤罪を訴える男性「完全無罪だと確信していた」 袴田さん無罪判決で 無期懲役が確定し、袴田さんと過ごした6年間「ゆっくりと休んで」
1966年に静岡県清水市(現静岡市)のみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件の裁判をやり直す再審公判で、静岡地裁は26日、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)に無罪判決を言い渡した。国井恒志裁判長は、確定判決が犯行着衣と認定した「5点の衣類」や自白調書などの検察側証拠に「三つの捏造(ねつぞう)がある」と断じ、袴田さんを犯人とは認められないと結論付けた。逮捕から58年、冤罪(えんざい)を訴え続けた袴田さんにとって悲願の判決となった。
■狭山事件の石川さん「無罪確信していた」
1963年に埼玉県狭山市の女子高校生=当時(16)=が誘拐され遺体で見つかった「狭山事件」で、無期懲役が確定し、冤罪(えんざい)として裁判のやり直しを訴える石川一雄さん(85)は26日、妻の早智子さんと共に車で静岡へ向かった。袴田巌さんとは6年間ほど東京拘置所で共に過ごした旧知の仲で、無罪判決を受けて「完全無罪判決だと確信していた。よかったね。ゆっくりと休んでください」とコメントした。
石川さんは77年に最高裁で無期懲役が確定し94年に仮釈放に。弁護団はこれまでに2度にわたって再審を訴え、いずれも棄却されてきた経緯を持ち、「なぜ冤罪が起き、晴らすのに長い時間がかかるのか、司法に反省を促す判決であってほしい」と切望。証拠開示に関する制度整備がない再審法について、「(今回の判決で)再審法改正に光が当たっている。イワちゃんの無罪判決を機に、早急に法律を変えなければいけない」と訴えた。
最後には「『次は狭山』という思いで、袴田さんと同じように再審開始、再審法改正の実現を目指して私も頑張ります」と決意を新たにした。
■担当弁護士「追い風に」
石川一雄さんの弁護団で事務局長を務める竹下政行弁護士(64)は「素晴らしい判決で歓迎したい。これを追い風に、狭山事件の再審に向けて活動にまい進したい」と語った。
竹下弁護士は、判決公判で捏造(ねつぞう)とした証拠品の衣類や自白調書について「捜査機関の主観的な正義感によって事実がゆがめられたことが明らかになった」と指摘。「狭山事件でも有力証拠や自白の経過に不自然な点がいくつもあり、その点では袴田事件と似た性格の問題を抱えていると認識している」とし、「今回の判断を受けて、改めて証拠の精査を徹底してほしい」と訴えた。
また多くの事件において再審開始までに長い年月を要することについては、その必要性を裏付けるための要素となる証拠を開示してこなかった検察側の姿勢が一因であると批判。狭山事件に関しても「いまだに開示されていない証拠が数多くあるはず」とし、「現行の再審法では証拠開示に関する制度整備がない。証拠の管理と開示の適切な運用を規定した法改正を急ぐべきだ」と問題提起した。