暴力団組員を殺人罪で起訴 被害男性は行方不明、遺体見つからず…匿名の情報で埼玉県警が捜査、殺害と特定
飲食店従業員の男性に暴行してけがを負わせたとして、県警が10月に傷害容疑で男女7人を逮捕し、うち男1人について、さいたま地検は4日、殺人の罪で、さいたま地裁に起訴した。県警が同日、発表した。男性は行方不明になっており、遺体は見つかっていないものの、捜査の結果、殺害されたと特定。県警は10月29日付で川口署に特別捜査班を設置しており、遺体を捜索するとともに経緯を詳しく調べている。
県警捜査1課によると、傷害容疑で逮捕、殺人罪で起訴されたのは、上尾市柏座3丁目、指定暴力団六代目山口組傘下組織組員(54)。
逮捕容疑は無職男性(52)と共謀の上、2016年3月18日未明から明け方にかけて、川口市西川口1丁目の飲食店「ハワイアンバー Lapule」内で、従業員男性=東京都豊島区目白5丁目、当時(24)=に殴る蹴るの暴行を加え、全治不詳の傷害を負わせた疑い。「間違いない」と容疑を認めているという。
県警は10月8~15日、男性に対する傷害容疑で、組員を含む男女7人を逮捕し、関係者らの供述や携帯電話の通信履歴などから、殺人容疑も視野に捜査を進めていた。組員は殺害については否認しているという。
組員と共謀した無職男性は同店の経営者で、逮捕後の10月28日に川口署の留置場内で首をつって自殺した。
男性は殺害された後、店内から運び出され、いずれかの場所に遺棄されたとみられており、遺体は見つかっていない。組員や経営者の男性との間に金銭トラブルを抱えていたという。組員らは店内で暴行した後、事件の発覚を怖れて殺害した可能性があるという。
18年12月、県警に「西川口の飲食店で関係者が暴行後に殺害され、遺体を遺棄された」と匿名の情報提供があり、捜査を開始した。その後に被害者の男性を特定し、19年2月に父親から行方不明届を受理。今年に入って関係箇所を家宅捜索するなどしていた。
県警はこれまでに延べ2千人以上の捜査員を投入。発生から約5年7カ月が経過し、立件に至った。遺体がなく、捜査は難航を極めたという。
男性の父親は県警を通じて、「大切な息子との突然の別れが信じられない。ただただ悔しく、犯人を許せない気持ちでいっぱい」とコメントを出した。