列車内で刃物男暴れると想定 埼玉県警とJR東が合同訓練 駅や列車から通報…情報収集や制圧する対応確認
東京都内を走行していた小田急線や京王線の車内で乗客が刺傷された事件を受け、県警は16日、JR東日本大宮支社と連携し、列車内で刃物を使用した男が暴れているとの想定で合同対応訓練を行った。さいたま市大宮区のJRさいたま新都心駅では刃物を持った男を制圧する対応を確認。県警本部では各署との無線を通じて情報の収集と事態の把握に努める訓練を実施した。
訓練には県警とJRの計約70人が参加。県内を走るJR宇都宮線の車内に刃物を持った男が現れたとの想定で行われた。栗橋駅、久喜駅、蓮田駅や走行中の列車から、「車内でたばこを吸った男を注意したら怒りだした」「バッグに刃物らしい物が見えた」「電車内で殺すという奇声を発している」「男が切り付けて、けが人がいる」との通報が次々と本部の通信指令課に入電。管轄の警察署に連絡したり、現場から情報を収集するなどの手順を確認した。
想定では最終的に列車がさいたま新都心駅で緊急停止し、男が降車。通報を受けて同駅に配備されていた大宮署の警察官らが利用客を安全な場所に退避させるとともに、刺股や盾を使って犯人役の男を取り押さえた。
また、上空からは県警のヘリコプターが列車や犯人の動きを追跡し、リアルタイムで現場の状況を伝えた。
大宮署の富岡洋署長は訓練を終え、「事案発生の際に対応する手順を確認できた。引き続き鉄道事業者と連携を強化し、対処能力の向上を図っていきたい」と説明。「利用者には速やかな通報をお願いするとともに、可能な限り距離を取って安全を確保してほしい」と話した。
さいたま新都心駅の河野政樹駅長は「お客さまや社員の刺傷事案がないように、安心で利用しやすい鉄道を目指していきたい」と語った。
■カメラ、通報装置…鉄道各社も対策
小田急線や京王線の車内で発生した刺傷事件を受けて、県内に路線がある鉄道各社も防犯対策に取り組んでいる。
JR東日本大宮支社によると、埼京線では2010年から痴漢や迷惑行為防止のため、車内に防犯カメラの設置を開始。都内の山手線でも18年から導入し、以降は京浜東北線、高崎線など県内を走行する路線でも設置を完了した。
非常通報装置「SOSボタン」は全車両に1カ所以上付いており、もしもの場合は乗務員と連絡が取れる。新幹線停車駅や在来線主要駅では刺股などを配備し、駅員に使い方を指導している。
西武鉄道は10月末時点で車内の防犯カメラを150両414台設置。引き続き新車両への導入を進めている。車内の通報装置は各車両に2~3カ所付いているという。
東武鉄道でも防犯カメラなどの対策を取るとともに、今週から社員による車内の巡回を実施。「駅や車内の警備を強化しています」という車内放送の回数を増やし、乗客に対しては速やかな通報や安全確保を呼び掛けている。