喜び満ちた児童の歌声、音楽室に響く 埼玉・戸田の音楽教諭らが音源集を制作、心癒やす音楽の楽しさ感じて
コロナ禍でも学びを継続しようと、戸田市の音楽教諭らが教材音源集「音楽まなびの森」(キングレコード)を制作した。新型コロナ感染拡大時は飛沫(ひまつ)感染が懸念され、授業が十分できなかった経験を踏まえ、「音楽の楽しさを学んで感じる一助になれば」との思いを込めた。
■歌える喜び
緊急事態宣言が解除された10月中旬、戸田東小学校の音楽室には児童の喜びに満ちた歌声が響いた。「しばらく学校で歌えなかったが全員で歌えるのは楽しいですね」。教諭の呼び掛けに笑顔を見せる児童たち。マスク姿のため大きな歌声は出せないが、久しぶりの日常が戻ってきた。
緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の期間中は、音楽の授業でさまざまな制約が強いられた。一番は飛沫感染の懸念がある歌唱の中止。鍵盤ハーモニカやリコーダー使用も自治体によっては制限された。本来楽しいはずの音楽授業だが自由に音を表現できず、ストレスを感じる児童もいたという。
■声や楽器を使わず
「音楽の学びを止めてはいけない」。立ち上がったのは県内学校で20年以上、音楽を専門に教える同校の小梨貴弘教諭(49)たちだ。同じ思いを共有する近隣市の教員とも意見交換し、レコード会社の音源を選曲・監修する形でCDを完成させた。「コロナが怖いから授業ができないではなく、マスク姿でも音楽を通して心が結べるツールを作りたかった」と小梨教諭。制限が多い中で指導に悩む教職員向けとしても手掛けた。
教材には全59曲が収録される。ゲーム感覚でリズム表現する曲や季節を感じる効果音など、声や楽器を使わず学べるのが一番の特徴だ。拍間を学ぶ際は異なる拍子の楽曲を交互に流し、手や足を使ってリズムを体現。創造力を育む時には珍しい楽器の音を流し、どのように音色が生まれるのかを児童に考えさせる。
付属の冊子にはQRコードもあり、動画投稿サイト「ユーチューブ」と連動した視覚での学びもできる。
■心癒やす力に
小梨教諭はコロナ感染拡大時の音楽授業について「歌えないのは残念と感じながらも、感染を心配して声を出すこと自体、怖く感じている子どもも多かったのでは」と振り返る。歌いたいが歌えない、児童のそんなもどかしさを肌で感じてきたからこそ、「何か協力したい」との思いが芽生えたという。
小梨教諭は「音楽は本来みんなの気持ちを一つにし、人の心を癒やす大きな力がある。教材が音楽の楽しさを感じる一助になってくれればうれしい」と話している。