埼玉新聞

 

コロナ禍で仕事激減…イベント会社、ごみゼロで循環する展示ブース開発「作って捨てる業界だからこそ」

  • SDGsな展示ブース「TUS+++」(エクス・アドメディア提供)

  • 木製のQRコードを持つエクス・アドメディアの中村俊宏さん(左)と室井竜也さん=さいたま市南区

 新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受けたイベント会社が、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組み、廃棄物ゼロをコンセプトにした出展ブースを開発した。再利用できる国内産の木材を活用し、デジタルコンテンツの展示により、ペーパーレスを図る。同社は「作っては捨てるを繰り返してきた業界だからこそ、コロナ禍で考え抜いた」としている。

 開発したのは、イベント会社「エクス・アドメディア」(さいたま市南区)。同社によると、新型コロナの感染拡大で、ほとんどのイベントが中止になり、年商はコロナ前の12億円から約3分の1に落ち込んだ。仕事が激減する中、アフターコロナを考えて昨年4月、社内にSDGsを検討する委員会を設置。テーマを決めて隔週で会議を開き、会社全体でアイデアを出し合いながら、社内で情報共有を進めた。

 代表取締役社長の中村俊宏さん(60)は「食品ロスを含め捨てることが多い業界で、罪悪感やコンプレックスがあった。だからこそ解決できることが多いのではないかという発想から、SDGsに取り組んだ」と振り返る。

 開発した展示ブースは、「TUS(タス)+++」。今年8月、特許庁の実用新案に登録された。国内産の板材で、誰でも組み立てられるように設計。木材はアルミなどの素材よりも二酸化炭素(CO2)の排出量が格段に少なく、古くなれば木材としてリユースする。紙製のカタログや掲示物を用いず、仮想現実(VR)などのデジタルを駆使し、モニター画面のQRコードから、データを取り込むシステム。

 開発マネジャーを務める佐藤恒平さん(69)は「できるだけ余計なものを省き、必要だったら足す」から名付けた。使用する木材を購入する時に、森を守るための植林も検討し、「ごみゼロ、循環する展示ブースを目指した」と話す。

 同社は本年度から始まったさいたま市SDGs認証企業の認証を受けた。展示物で使用する素材のリサイクル率を数値で示すサービスを開始。チラシに使う紙をできる限り減らすため、木製のQRコードも開発している。

 中村さんと佐藤さんは「SDGsは世界の共通言語で、企業の活動に必要なものになっている」「ごみゼロで、一方的な消費を立ち止まって考える必要がある」と話した。

 ◇   ◇

 同社は新しい展示ブースについて、8~10日、東京ビッグサイトで開催される「持続可能な社会の実現に向けて エコプロ2021」に出展する。さいたま市の協力を得て、自治体のSDGsの取り組みを紹介する。

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