ボランティアら、週末の部活動を指導 学校外部の人材に委ねる「地域部活動」、白岡でモデル事業始まる
教員の負担軽減などを目指し、学校の部活動の指導を外部の人材に委ねる「地域部活動」は本年度、国が全国各地に拠点校を置いて試行している。埼玉県内ではモデル事業として、白岡市が11月から市内の中学校4校で「地域部活動」を始めた。ボランティアらが委託団体に指導員として登録し、生徒の週末の部活動を指導している。国は2023年度から本格化したい意向だが、運営や運用は自治体や学校に任せられており、同市も試行錯誤しながら取り組んでいる。
■技術、経験伝える
11月下旬、白岡市立南中学校で地域部活動の様子が公開された。南中OBで学区内に住む会社員飯島賢さん(49)はこれまで、ボランティアで週末にソフトテニス部の指導に当たってきたが、今回は地域部活動の指導員として参加した。競技経験がある飯島さんは「専門的な技術や経験を伝えることが何より大切。私も子どもたちと楽しんでいる」と笑顔を見せた。
顧問の女性教諭はソフトテニスは未経験。飯島さんの指導について教諭は「私は生徒と一緒に楽しむことはできるが専門的な指導はできないので、とても助かっている」と歓迎する。福沢仁恵校長も「小さい子どもがいる若い教員には、とてもありがたい制度」と地域部活動に前向きだ。
■必要な保護者の理解
地域部活動のスタートに当たり、同市では委託団体「ASC(アスク)」を設立。本年度は国、県のモデル事業として、市内中学校4校の運動・文科系計10の部活動を対象に実施し、課題を検証する。
これまで部活動を支援してきたボランティアがASCに指導員として登録し、指導する。指導員はASCを通じて保険に加入し、ASCから謝金(報酬)が支払われる。週末の部活動はASCの地域部活動の管理の下に行われ、教員は指導員に週末の部活動を任せられる。
同市では地域部活動の導入に向け、ASCが市教委、指導員、学校間で調整。各中学校で保護者向けに事業の概要を説明してきた。ASCの明野真久会長は「地域部活動を進めるためには保護者の理解が不可欠。地域の支えが重要だ」と強調する。
ただ、同市では教員も地域部活動の指導者として登録を認めている。南中の吹奏楽部では顧問の女性教諭がASCに登録。週末は地域部活動の指導者という形を取る。部活動に積極的に取り組む教員にも門扉が開かれており、市教委は「部活が命、という教員のモチベーションは維持したい」と狙いを話す。
■家庭の負担感懸念
本格的な導入を見据え、課題もある。外部に委託しても学校の責任がなくなることはない。学校の施設や器具を使用し、高校受験時の内申書には部活動での評価が含まれるなど、学校と部活動は切っても切れない関係にある。
運営するための資金の確保も必要だ。地域部活動は学校内で完結していた活動を地域に広げるという大きな改革。モデル事業では公的補助が見込めるが、運営を持続するためには、指導員への謝金や保険料などを誰が負担するのかという課題は避けられない。保護者、家庭の負担感が増してしまう可能性がある。経済的に支援が必要な世帯への対応なども求められる。
同市はモデル事業を踏まえ、今後部活動の範囲を拡大し、23年度には全ての部活動で地域部活動を導入する予定。市教委は「子ども、保護者、先生、地域がそれぞれプラスになる改革を進めていきたい」としている。