埼玉新聞

 

強い逆風、乱立招く 裏金問題、説明と追及 衆院選埼玉13区(久喜市、蓮田市、幸手市、白岡市など)

  • 街頭演説で政策を訴える埼玉13区の候補者

    街頭演説で政策を訴える埼玉13区の候補者=15日、久喜市(画像の一部を加工しています)

  • 街頭演説で政策を訴える埼玉13区の候補者

 自民非公認の無所属前職1人に、れいわと諸派の元職2人、国民、維新、共産の新人3人が挑む埼玉13区。自民党派閥の裏金問題で処分を受けた前職は「有権者への説明責任を果たす」とマイクを握り、5人の対立候補は「政治とカネの問題に決着を」と追及の手を緩めない。前職への強烈な逆風が乱立を招いたが、その風向きは複雑化している。

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■レッテル

 「裏金の説明、お願いします」。衆院選公示日の15日、自民非公認で無所属前職の三ツ林裕巳(69)が幸手市で開いた出陣式。支援者に交じって握手を求めてきた男性(48)の言葉に、応じる三ツ林の動きが一瞬止まった。裏金問題に対する世間の反応を象徴する出来事だった。

 旧科学技術庁長官を務めた父・弥太郎、三ツ林と同じく医師だった兄・隆志ともに自民の衆院議員で、公認を外れたのは今回が初めて。「党に対して憤りを感じたが、全てのみ込み、審判を仰ぐことにした」。比例復活がない上、選挙カーやビラなどで制約を受け、党の支援も受けられない。総裁選で支持した高市早苗を招き、19日に久喜市で開いた演説会では「どうか助けてください」と集まった支援者に何度も頭を下げた。

 陣営は「非公認の不利よりも、『悪いことをした人』というレッテルを貼られるのが怖い」と懸念する。「一挙一動に厳しい目が向けられる。かつてない逆風だ。だからこそ、真の意味で有権者の心をつかむ力が問われている」

■草刈り場

 共闘しない野党にとって、裏金問題で全国的に注目を集める13区は比例含みで自民批判票を狙う「草刈り場」(自民関係者)となった。ただ、選挙区内のほぼ全域に後援会を持つ三ツ林に比べていずれも組織力は劣り、票の分散は免れない。

 16日夜、宮代町の東武動物公園駅前で国民新人の橋本幹彦(28)が演説した。隣には党代表の玉木雄一郎。支援者が手にするスマートフォンの光を浴び「彼が頑張ることが日本を変えることにつながる。一緒に風や輪を起こしてほしい」と激励した。玉木は公示前にも応援に訪れている。

 橋本は裏金問題が発覚する前の昨年夏から準備を開始。青年会議所に入り、地域の祭りに参加するなど早くから浸透を図ってきた。「他陣営の比例戦略を否定するつもりはないが、小選挙区で三ツ林さんに勝とうと考えているのは私だけ」。28歳の若さと自衛官時代に鍛えた体を武器に自転車で駆け巡る。

■バーター

 無所属となった三ツ林に対し、各陣営とも「当選したら復党する。自民公認と変わらない」と対決姿勢を崩さない。公明の推薦に関しても、14区から出馬した公明代表が区割り変更に伴い三ツ林の一部地盤を引き継いだ「バーター」だと批判を強める。

 その急先鋒(せんぽう)が「裏金議員を国会に戻してはいけない」と訴えるれいわ元職の高井崇志(55)だ。18日に幸手市のスーパーで演説し「三ツ林さんが当選したら、みそぎが済んだと言われてしまう。絶対に許してはいけない」と語気を強めた。

 共産新人の沢口千枝子(73)は「裏金は個人の問題だけでなく、自民党組織の大政治犯罪」と断じ、維新新人の中原由棟(33)も「裏金議員をここから出してはいけない」と包囲網を張る。諸派元職の橋本勉(71)は税理士の立場から裏金問題を追及している。=敬称略

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