【独自】青天を衝け・吉沢亮さん、渋沢栄一のように駆け抜けた 思わず涙が…草彅剛さんとの共演は象徴
深谷市出身の実業家・渋沢栄一が主人公の大河ドラマ「青天を衝け」が26日、最終回を迎える。栄一役の吉沢亮さんは、大河初出演ながら主演の大役を見事に演じ切った。新型コロナウイルスの脅威との隣り合わせで進んできた今作品を振り返り、「無我夢中で駆け抜けてきた。渋沢栄一を演じることができて、自分の人生の中でも大きな財産となった」と感慨深げに語る。演じた渋沢栄一への思いや、共演した草彅剛さんとのエピソードなどを聞いた。(森本勝利)
―渋沢栄一役を演じてきた率直な感想を教えてください。
近代日本経済の基礎を築いた偉大な人物を、約1年半の撮影期間にわたり演じさせていただき、いま振り返ると渋沢栄一の人生のように無我夢中で駆け抜けてきたと実感しています。演じる前は新一万円札になるぐらいの認識しかありませんでしたが、色々と探っていき、どのような人物かを知ることで、栄一の新たな魅力に気付くことができました。演じる上で知らなかった人物を深く知れるのはこの仕事の醍醐味です。
激動の時代を生きた若者の熱量は凄まじく、その中に栄一もいて、出会いから何かが生まれ、何かを失う瞬間に立ち会ってきました。立場は変わっても、第1回から続く栄一のエネルギーは、最後まで発揮し続けられてきたと思っています。
―今作品では、13歳から91歳までの渋沢栄一の生涯を丁寧に演じられました。
年齢を意識しすぎると、栄一の熱量が落ちてしまうような気がしたので、声質や所作などの芝居で探りながら演じてきました。幕末から明治維新、そして近代日本へと時代が目まぐるしく移り変わり、例えば服装など身近な生活環境にも変化がありました。その中でも栄一は、自分の正義を貫き通し、血洗島で育まれた精神と情熱を生涯持ち続けていました。
栄一はとてもおしゃべりな役柄で、とてつもないせりふ量を覚えることを1年以上繰り返しました。他の現場では味わえない苦労がありましたが、役者としての基礎を鍛えられました。時には空回りしながらも、最後まで情熱をもって日本を突き動かした栄一の勢いを体感できる作品に仕上がったと思います。
―コロナ禍での撮影で特に苦労されたことなどを教えてください。
撮影時は本番までマスクを取ることが出来ず、リハーサルでも相手の表情を見ることなく演技をしていました。実際にカメラが回るまで分からない難しさはありましたが、むしろ分からないことを楽しみながら演じようと切り替えました。
特にパリ編は全面グリーンバックの中での撮影でしたが、当時の栄一はどういう思いで街並みや文化を見ていたのだろうと思いを馳(は)せながら演じることができて、演技の幅が広がった気がします。
―徳川慶喜役の草彅剛さんとの共演はどのように感じていましたか。
渋沢栄一と徳川慶喜の関係性は、今作品での大きなテーマの一つでした。一橋家に仕官して以来、生涯にわたり尊敬し続けてきた人物です。演じていても慶喜との場面は思わず涙がこぼれてきて、特に2人の最後は「青天を衝け」の象徴とも言えるシーンでした。
草彅さんとは撮影の合間にあまり話すことはありませんでした。意識的に距離を置いていたわけではなく、草彅さんに対する緊張感でもありました。どういう演技をしてくるか想像がつかず、良い意味で不安にもなるし、探られている感じがしました。お互いから出るものをその場で拾ってキャッチボールをする感覚は特殊と言えば特殊ですが、これが栄一と慶喜の関係性でもあるのかなと感じています。
―最後に、新聞読者・埼玉県民にメッセージをお願いします。
渋沢栄一の故郷・埼玉県深谷市は、街をあげて作品を盛り上げていただいているという話をお聞きしました。栄一役を演じる前やイベントなどで深谷市を訪れましたが、様々なところに「渋沢栄一」と書かれたのぼりがあって、こんなにも地元で愛されている人を演じるのかと感じ、改めて身の引き締まる思いでした。血洗島で生まれた栄一は、家族からの教えや他人を思いやる心、そして多くの人との出会いがなければ、きっと世界で活躍する姿はなかったはずです。
埼玉県民の皆様には多大なる応援をいただき、無事に大河ドラマの主演という大役を、最後まで駆け抜けることができました。「渋沢栄一を日本のスターにしたい」という熱い思いで演じてきましたので、ぜひ最後まで栄一を、そして「青天を衝け」を見守っていただければと思います。
―ありがとうございました。
■吉沢亮(よしざわ・りょう)
1994年生まれ。東京都出身。2009年、「アミューズ全国オーディション2009」で審査員特別賞を受賞、芸能界デビュー。2019年公開の映画「キングダム」で、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。その他主な出演作に、映画「銀魂」シリーズ、「リバーズ・エッジ」、「東京リベンジャーズ」など。NHKでは、連続テレビ小説「なつぞら」などに出演。大河ドラマは初出演。
(2021年12月26日付 埼玉新聞「大河ドラマ『青天を衝け』最終回特集」より)
=埼玉新聞WEB版=