埼玉新聞

 

シューと飛んだカワセミ、ツグミはツンツンと 自然の表情を生き生きと、身近な動植物を記事と写真で紹介

  • 観察会で水鳥を紹介する三好あき子さん

 木曜付本紙地域面に掲載されている「道ばただより│春日部の自然」が、2006年の連載開始から昨年12月で700回を超えた。自然の表情を生き生きと伝える記事はどのように生まれるのか。筆者で埼玉県生態系保護協会春日部支部長の三好あき子さん=春日部市在住=を取材し、舞台裏を探った。

■自然観察会

 「道ばただより」は地元春日部を中心に、身近な動植物を記事と写真で紹介している。三好さんがつづる自然の姿は、どこか人間の生き方や社会の在り方にも通じるところがある。

 毎週水曜の入稿に向け、三好さんは「何をテーマにするか週末に見通しをつけ、月曜、火曜に書き上げる」と段取りをつける。週末に開かれる観察会が「道ばただより」のテーマになることが多いという。

 昨年12月中旬、さいたま市緑区のさぎ山記念公園で行われた自然観察会に同行した。

 「ツグミはツンツンと足を踏んで、胸をそるような動き。だるまさんが転んだみたい」「ヌマスギの由来は沼の近くに生えているから。根の一部を地上に出し呼吸している」「あらま、ロウバイ。いいにおい」。三好さんを中心に和気あいあいとした雰囲気の中、参加者の会話が弾む。

 狭い水路の水面をコバルトブルーの羽がきれいな直線を描いた。「あ、シューと飛んで行った。カワセミ」。思わず三好さんが声を上げた。

 五感を通じて得られた情報が次々と言葉に。三好さんは「仲間との会話から気付かされることや疑問に浮かぶことが原稿のテーマになる」と語る。

■写真と季節感

 観察会で見つけた数々の素材の中から三好さんは「道ばただより」のテーマを選ぶが、意外にも写真の良しあしが決め手になるという。「良い写真が撮れたかどうか。この時点でボツになるものが結構ある」と苦笑い。

 もう一つ、「読む皆さんにとって季節感があるものを素材に選んでいる」とも。人は文化や生活の中に自然を巧みに取り入れている。その点を意識しテーマを選ぶ。

 観察会が行われた次の週に選ばれたテーマは「ロウバイ」(12月16日付掲載)だ。「花の少ない冬に咲く。甘いほのかな香りを漂わせる」。この時期ならではの自然との出合いを伝えたいとの思いだ。

 執筆の前に、どういう生き物か、植物かを調べる。ロウバイは中国原産。原稿では「蝋梅」の名前の由来について解説した。一方、ロウバイの花に虫の姿がないことに疑問を持ち、自らの経験を振り返り「原産地にはロウバイを頼りに冬に活動している昆虫がいるに違いない」と締めくくった。

 「書きながら気が付いたことを書く。人間の視点ではなく、虫なら虫、植物ならその植物の側の視点で書くことを心掛けている」

 観察会の中で発見し仲間と語った内容を基にテーマを選び、調べる。その中で三好さんが思ったことを書き加える。重層的な作業が、ロングランの秘訣(ひけつ)のようだ。

 観察会やビオトープの保存活動などの予定は県生態系保護協会春日部支部のホームページや春日部市内公共施設で配置される「自然ふれあい通信」で確認できる。

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