【ぷらっとTOKYO】荻窪、善福寺川で水鳥観察 井伏鱒二と太宰治が釣り糸垂らす
東京都杉並区の善福寺池に発し、南東へ流れて神田川に合流する善福寺川。住宅地の中の地味な川だが、何種類もの水鳥が生息し、自然を身近に感じられる場所でもある。JR荻窪駅から出発し、隣の西荻窪駅付近まで流れをさかのぼった。
荻窪駅西口の「すずらん通り」を南西に抜けて、環状8号線を渡ると善福寺川に行き当たる。カモの泳ぐ姿が目に入った。時折、逆立ちの姿勢で頭を水の中に突っ込み、餌を狙っている。橋の下では真っ黒いカワウが羽を広げていた。
この辺りにはカモのほか、シラサギの仲間であるダイサギやコサギが多く、青みがかった灰色のアオサギもよく見かけられる。
流れに沿って北西に進んでいくと、川はやがて東西に走るJRの高架線と交差した。かつて作家の井伏鱒二と太宰治が釣り糸を垂れたのは、この近くだった。
井伏の随筆「荻窪風土記」には「この日、私は太宰を連れて善福寺川の釣場へ行ったが、何もかもお話にならなかった。ガード下の洗い場でも、その下手の薪屋の堰でも釣れなかった」と書いてある。昭和の初め頃で、川には澄んだ水が流れていた。
高架をくぐってさらに先へ進んだ。真中橋でいったん川を離れ、青梅街道へ向かう道を北上すると、文化勲章受章者の建築家故芦原義信さんの設計で1967年に建てられた、区立の宴会場「杉並会館」が見えてきた。
重厚な内装が印象的で、3、4階には「東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム」が入居。日本のアニメの歴史を紹介する展示やアフレコ体験などが楽しめる。
再び川沿いを西に歩き、関根橋から西荻窪駅まで南下した。居酒屋や骨董店、古書店の多い街で半日の散歩を終えた。
【メモ】善福寺川に沿った小道には緑も多い。所々の家から大きな庭木が枝を張り出し、木陰をつくっている。