高2死亡…学校が謝罪、乗っていた車が横転 深夜の高校グラウンドで、助手席から身を乗り出していた17歳 最大の落ち度は「鍵の管理」 憔悴しきった生徒ら、話を聞けない状況
さいたま市西区西遊馬の私立埼玉栄高校の総合グラウンドで16日夜、同校の生徒らが乗った整備用の軽乗用車が横転し1人が死亡した事故を巡り、同校を運営する学校法人佐藤栄学園は19日、記者会見を開き、田中淳子理事長は「悲しい事故が起き、痛恨の極み。亡くなった生徒やご遺族の皆さまに深くおわび申し上げる」と謝罪した。同法人幹部らは会見で「事故車両はサッカー部所有で、管理を一任していた」と車の鍵の管理に関与していなかったとしつつ、「鍵の管理に落ち度があったのが事故の最大の原因」と責任を認めた。
同校は18日、全校生徒に事故を説明し、黙とうをささげたという。20日に臨時保護者会を開き、保護者らに説明するとしている。
事故は16日午後11時半ごろ発生した。男子生徒(16)が車を運転し、陸上部トレーニング用の坂に衝突して横転。運転していた生徒が119番した。助手席に乗っていた男子生徒(17)が車と地面の間に挟まれ、搬送先の病院で死亡が確認された。事故当時、車窓から身を乗り出していたとみられる。
同法人の説明によると、16日夕、サッカー部のコーチが車を使用した後、運転席側のダッシュボード上の小物入れに鍵を入れた。生徒らは寮の午後9時の点呼後、午後11時ごろまでの間に、寮監に見つからないように抜け出し、徒歩約15分の距離にあるグラウンドに向かったとみられる。警察による事情聴取が続いており「関係生徒は憔悴しきっていて、学校側が話を聞ける状況にない」とした。
サッカー部は2022年8月、整備に使用していた車が故障したため、今回の事故車両となる中古車1台を購入した。部の倉庫内で鍵を管理していたが、23年3月に倉庫のガラスが割れ、鍵の管理方法を検討。約150人の部員が5チームに分けて練習し、入れ替わりのたびにグラウンド整備が必要となり、監督、コーチ間で円滑に受け渡しをするため、車両内で鍵を保管することになったという。
法人側は、部員や他の生徒が鍵の管理方法を知った経緯は不明と説明。生徒らが警察に対して「過去にも運転した」と話していることについては、「サッカー部の監督、コーチは『そういうことはないだろう』と話した。グラウンドで車に乗った形跡が見つかったこともない」とした。
同校では、サッカー部や他の運動部でナンバープレートのないグラウンド整備用の車が6台ある。今後、同法人の系列の学校を含め、ナンバーのない車の使用を廃止し、グラウンド整備専用のトラクターを導入して、厳密な鍵の管理を徹底する方針としている。
事故原因や学校の管理体制については、県警の捜査に協力し、全容解明が進んだ段階で田中理事長やサッカー部の監督、コーチらの責任や処分を検討するという。
現在、総合グラウンドを使用する野球部や陸上部など五つの部活は練習を停止。他の部活を含めた今後の大会出場について、町田弦校長は「生徒の意思を尊重する。今は一生懸命練習している」と話し、辞退などの予定はないとした。
■車管理の監督ら、任意事情聴取へ
さいたま市西区西遊馬の私立埼玉栄高校のグラウンドで16日発生した事故で、事故車両を管理していたサッカー部の監督やコーチらについて、県警が任意の事情聴取を行う方針であることが19日、捜査関係者への取材で分かった。車両の管理に不備があった可能性があり、業務上過失致死の疑いも視野に捜査する。
捜査関係者によると、当初は事故があった車両には同校2年の男子生徒3人が乗っていたとされていたが、その後の捜査で1年の男子生徒(16)も同乗していたことが判明。事故後に現場から立ち去っていた。4人はいずれも同じ寮に住んでいたという。
車を運転していた男子生徒(16)は県警の任意の事情聴取に対して、過去にも同様にグラウンドで車を運転していた旨の話をしている。公道ではなく同校敷地内で発生したことなどを踏まえて、県警は自動車運転処罰法違反の過失致死や危険運転致死などの疑いがあるとみて調べている。