【東京ウオッチ】色彩の中に探究した生と死の風景―野見山暁治さん追悼展、アトリエ構えた練馬で いまのTokyoをつかむイベント情報(23日~12月1日)
◎今週の一推しイベント
【23日(土)】
▽「追悼 野見山暁治 野っ原との契約」後期展示(~12月25日、練馬区・練馬区立美術館)
戦後の日本洋画の第一線で活躍し、2023年に102歳で亡くなるまで制作を続けた画家で文化勲章受章者の野見山暁治さん。その画業を振り返る展覧会の後期展示が、練馬で始まった。
従軍前後に描いた具象画や戦後のフランス留学時代の作品に焦点を当てた前期に対し、後期では、フランスで得たおおらかな筆致と明るい色彩を取り入れた抽象画を紹介している。
人間や自然の本質を自在に表現した深みのある作品で、美術界に大きな存在感を示した。雄大な山岳を描いた油彩「岳」では、山の稜線の複雑さと空の塗りつぶされた部分を大胆に組み合わせた。ドローイング「古びた衣装」はアトリエに持ち込んだ幾重もの舞台衣装を繊細に描き、屋内に風景を見いだしている。
野見山さんは、年齢や立場に関係なく誰にでも開放的に接することで知られたが、同時に本質を見抜き、緊張感をもたらす一面もあったという。学芸員の木下紗耶子さんは「表層にとらわれず、人間の抱える孤独と不安に鋭く切り込んでいった。たゆまずに新しいことに挑戦する精神で、描くことを探求し続けた」と話す。
抽象画の特徴となった色彩の中には死の影が漂う。生前は戦没画学生の遺作を収集展示する美術館「無言館」(長野県上田市)の設立に尽力した。「出征して生き残った自分の命は“描くこと”を預かったと語っていた。亡くなった東京美術学校(現東京芸術大)の仲間への思いが終生あったのだろう」
画家として戦う場だった練馬と、故郷・福岡の青い海と空がある糸島のアトリエに、その心象が垣間見える。会場では練馬のアトリエを再現。使いかけの筆や絵の具、ユニークな骸骨の人形や手作りのぬいぐるみなどの愛用品を置き、油彩「丘」をイーゼルに立てた。自由で革新的な生き方を伝える空間となっている。
○そのほかのお薦めイベント
【23日(土)】
▽「エトロが届けるクリスマスのイタリア伝統菓子」(なくなり次第販売終了、中央区・エトロ銀座本店ほか)
クリスマスに向けたイタリアの伝統菓子が、イタリアの高級ブランド「エトロ」の東京や大阪の各店で数量限定販売されている。
ミシュランの星を持つレストラン「イル・ルオゴ・アイモ・エ・ナディア」とのコラボレーションによる菓子2種類を用意した。銀座本店のみ販売のパンドーロは、星型のフォルムが特徴のベローナの伝統的クリスマスケーキ。イタリアの原材料を使って作られたパネットーネも同国のクリスマスケーキの代名詞だ。
エトロらしい美しいパッケージもうれしい。エレガントなサテン仕上げのメタルボックスと、専用ショッピングバッグに入れて提供している。イタリアで過ごすぜいたくな冬を感じてみたい。
▽「企画展『青山と70年』」(~25年2月24日、港区・岡本太郎記念館)
芸術家の岡本太郎さんが1954年に自宅兼アトリエを青山に構えてから70年。そのアトリエと岡本さんの関係を紹介する企画展が開催されている。
青山は岡本さんが幼少期を過ごした地。太平洋戦争が終わり46年に復員すると家も過去の作品も空襲で失われていたが、くじけることなくアトリエを造り再出発を決意。戦後の美術史に残る多くの作品を生み出した。
記念館の旧館として今も残るアトリエ住居を設計したのは盟友の坂倉準三だ。パリで現代建築の巨匠ル・コルビュジェに師事した建築家は、お金がなかった岡本さんのためにローコスト建築を実現させた。
新館では、旧館の模型や当時の設計図を展示し、門扉を制作する岡本さんの姿を収めた映像を上映。50年代に制作された油彩画も紹介し、青山で始動した芸術の起源に多面的に迫った。数々の展示写真には、創作活動を行う、またくつろぐ芸術家の姿が見つかる。
旧館のサロンや庭には、“ものと人間は対等な関係”というメッセージを込めた「坐ることを拒否する椅子」など、生活の中に創造的な遊びを追求するプロダクトがいくつも展示されている。
北側の大きな窓から光が差し込むアトリエで、代表作「太陽の塔」や壁画「明日の神話」の原案などが生まれたという。棚には油彩画が並び、画材道具のほかに演奏を楽しんだピアノなども置かれ、在りし日の芸術家の気配が感じられる。
記念館事務局の黒田真帆さんは「生涯のパートナー、岡本敏子さんは『戦闘基地』『塹壕』と呼んでいた。挑戦を続け、生活する場所でもあった。岡本太郎作品の“源”を知ってほしい」と話した。
▽「麻布台ヒルズ クリスマスマーケット2024」(~12月25日、港区・麻布台ヒルズ中央広場)
クリスマスならではの特別な祝祭感を味わえるマーケットが、麻布台ヒルズで開かれる。
中央広場のきらびやかなゲートの先に、デコレーションされた小屋が並び、国内外から選ばれた八つの初出店店舗を含む17の飲食・物販店舗がならぶ。モミの木のツリーも飾られ、シャンパンゴールドの光が彩るこの季節ならではの空間だ。
注目は、伝統的なクリスマスデコレーションを数多く取りそろえるドイツの専門店「ケーテ・ウォルファルト」。本場のかわいらしいクリスマス用品が紹介されている。
12月11~19日には「ピエール・エルメ・パリ」のパティスリー(生ケーキ)と、シャンパン、紅茶をカウンター席で楽しめる期間限定のイートインが登場。一足先に心躍るひとときを過ごしたい。