痛ましい…高2死亡、窓から身を乗り出して車が横転 深夜グラウンドで 納得できない保護者「これでオーケーではなく“第三者委”設置して」 生徒らショック「学校を休んでいる子も」
16日にさいたま市西区西遊馬の埼玉栄高校グラウンドで同校の男子生徒4人が乗った軽乗用車が横転し、1人が死亡した事故について、20日の説明会に参加した保護者によると、学校側は第三者委員会を設置し、事故原因や対策について検証する意向を示した。
説明会後、報道陣の取材に応じた保護者の男性(45)によると、説明会の質疑応答で委員会設置を求める意見が保護者から上がり、学校側は「そういうものを検討し、対応する」と答えた。学校側の説明は「真摯(しんし)で、時期も適切だった」と評価したが、説明会に参加した他の保護者の中には、車の鍵の管理について、心配し、納得していない人もいたという。さらに、自身の子どもを含め、ショックを受けている生徒が少なくないとして「学校を休んでいる子もいると聞く。カウンセラーが対応に当たると説明があったが、しっかりとしたケアをしてほしい」と注文した。
参加した50代男性保護者も取材に「学校としては『これでオーケー』と思うかもしれないが、第三者の意見を聞いてほしい。リスク管理の専門家を活用すべき」と指摘した。
■「高校生とはいえ、まだ幼い」(以下、保護者説明会開催時の記事)
さいたま市西区西遊馬の私立埼玉栄高校グラウンドで16日夜、同校の男子生徒4人が乗った軽乗用車が横転し、1人が死亡した事故で、同校は20日夜、保護者説明会を開いた。参加した保護者によると、校長らが事故当時の鍵の管理体制などを説明。保護者から「防げた事故だったのでは」との指摘が出たという。
説明会では、保護者から「監督とコーチでダブルチェックすべきでは」などの声が上がり、涙ぐむ人もいたという。50代男性は「起きなかったはずの事故。当たり前のことを当たり前にできる管理体制にしてほしい」と話した。
2人の子どもを通わせる男性(45)は鍵の管理体制を質問し、学校側の回答に「納得した」と話す。ただ、学校側が「顧問に一任していた」としていることに、「ずさんであり得ない」と指摘した。
説明会前、保護者らは「同じ学校に子を通わせる親として、いたたまれない」などと話し、沈痛な面持ちで言葉少なに校舎内に足を運んだ。
同校3年の女子生徒の母親(47)は「高校生とはいえ、まだ幼い。痛ましい事故が起きた経緯を知りたいし、学校には対策を講じてほしい」。2年の女子生徒の父親は「鍵の管理と今後の対応について聞きたい」と話した。
事故現場のグラウンド周辺は、夜は真っ暗で人が通ることはめったにないという。ただ、近所の男性(67)は夏に数回、照明が午後11時過ぎまで点灯しているのを見て「普段は午後7、8時には部活が終わり、照明が消えているのに」と不思議に思ったという。事故を報道で知り、「生徒たちは頭を下げてあいさつするなど、しっかりしている印象。過ぎたいたずらだったのかも」と案じた。救急車やパトカーの音で目が覚めた近隣の60代女性も「真面目な生徒が多いのに」と驚きを隠せず、「今後同じことがないようにしてほしい」と話した。
■車内で鍵を保管「円滑な受け渡しのため」(以下、記者会見時の記事)
さいたま市西区西遊馬の私立埼玉栄高校の総合グラウンドで16日夜、同校の生徒らが乗った整備用の軽乗用車が横転し1人が死亡した事故を巡り、同校を運営する学校法人佐藤栄学園は19日、記者会見を開き、田中淳子理事長は「悲しい事故が起き、痛恨の極み。亡くなった生徒やご遺族の皆さまに深くおわび申し上げる」と謝罪した。同法人幹部らは会見で「事故車両はサッカー部所有で、管理を一任していた」と車の鍵の管理に関与していなかったとしつつ、「鍵の管理に落ち度があったのが事故の最大の原因」と責任を認めた。
同校は18日、全校生徒に事故を説明し、黙とうをささげたという。20日に臨時保護者会を開き、保護者らに説明するとしている。
事故は16日午後11時半ごろ発生した。男子生徒(16)が車を運転し、陸上部トレーニング用の坂に衝突して横転。運転していた生徒が119番した。助手席に乗っていた男子生徒(17)が車と地面の間に挟まれ、搬送先の病院で死亡が確認された。事故当時、車窓から身を乗り出していたとみられる。
同法人の説明によると、16日夕、サッカー部のコーチが車を使用した後、運転席側のダッシュボード上の小物入れに鍵を入れた。生徒らは寮の午後9時の点呼後、午後11時ごろまでの間に、寮監に見つからないように抜け出し、徒歩約15分の距離にあるグラウンドに向かったとみられる。
サッカー部は2022年8月、整備に使用していた車が故障したため、今回の事故車両となる中古車1台を購入した。部の倉庫内で鍵を管理していたが、23年3月に倉庫のガラスが割れ、鍵の管理方法を検討。約150人の部員が5チームに分けて練習し、入れ替わりのたびにグラウンド整備が必要となり、監督、コーチ間で円滑に受け渡しをするため、車両内で鍵を保管することになったという。
法人側は、部員や他の生徒が鍵の管理方法を知った経緯は不明と説明。生徒らが警察に対して「過去にも運転した」と話していることについては、「サッカー部の監督、コーチは『そういうことはないだろう』と話した。グラウンドで車に乗った形跡が見つかったこともない」とした。
同校では、サッカー部や他の運動部でナンバープレートのないグラウンド整備用の車が6台ある。今後、同法人の系列の学校を含め、ナンバーのない車の使用を廃止し、グラウンド整備専用のトラクターを導入して、厳密な鍵の管理を徹底する方針としている。
事故原因や学校の管理体制については、県警の捜査に協力し、全容解明が進んだ段階で田中理事長やサッカー部の監督、コーチらの責任や処分を検討するという。
現在、総合グラウンドを使用する野球部や陸上部など五つの部活は練習を停止。他の部活を含めた今後の大会出場について、町田弦校長は「生徒の意思を尊重する。今は一生懸命練習している」と話し、辞退などの予定はないとした。