日本人の「わびさび」を表現、伝統技法「金継ぎ」 体験型観光、訪日客に人気のコンテンツ 川口の短大で観光を研究するゼミ、大学祭で技法や工程を教える
壊れた器を漆で修復し金粉を使って表面塗装する日本古来からの伝統技法「金継ぎ」を体験するイベントが川口市木曽呂の川口短期大学で行われた。金継ぎは、日本人の「わびさび」を表現する訪日客の体験型観光として人気のコンテンツ。また「モノを大切に再利用する」持続可能な開発目標(SDGs)にも該当することから、観光を研究課題とする同短大の冨吉ゼミが今年初めて企画。10月26日の大学祭で、ゼミ生たちが、来場者にその技法や工程を教えた。
金継ぎは、400年以上前のお茶の文化から始まったとされる。修理を施されよみがえった器が、以前のものに変化を織りなす多様な美しさを帯びた「高い価値」として認められる伝統工芸品だ。
一般的な工程は、漆を接着剤などとして使用。割れた破片をつけて欠けた箇所を埋め、最後に修理した箇所に漆を塗り、漆が乾かないうちに金粉をまく。その後乾かして完成となるが、最短でも2カ月程度時間を要するという。
この日は、最後の仕上げとして、修復した器に漆を塗り、適度な温度と湿度を保つ漆風呂で器を乾かした後、代用金粉の真ちゅう粉をまぶす作業を約30分かけて約30人に体験してもらった。
同ゼミで座学と技術を学び、教える立場になった1年の安村桃香(18)さんは、「学校に入るまで(金継ぎを)知らなかったが、物を大切に使う理解が深まった」と述べた。石川愛美さん(18)は、「器が再び出来上がった時の美しさや感動を伝えることができた」と手応えを口にした。来場者の一人、大学1年の船本琉宇さん(19)は「伝統文化を学べて楽しかった。魅力的な作業だった」と話していた。
ゼミで指導するビジネス実務学科の冨吉光則准教授は、「1年生17人の関心が高く積極的に準備してくれた。就職活動で観光関連を目指す学生が多く、その点でも役立つテーマだったと思う」と振り返った。
今回の取り組みは、県のSDGsパートナーとして申請し、登録されれば、大学機関における金継ぎを対象とした初の認定になる見込み。今後、大学内で技術を広めながら、高校などで金継ぎ体験を普及していきたいとしている。