焦って…JR駅前の市有地、不正に売却してしまう 懲戒免職になった男性職員を書類送検 勝手に市長印を押していた53歳、土地返還代金と和解金は計約8880万円 明確な動機は不明「相手を待たせていたので」
さいたま市の土地が不適正に売却された事件で、県警は19日、市長印を不正に使用して土地売買契約書を偽造して交付したなどとして、当時担当だった与野まちづくり事務所の男性職員(53)=懲戒免職=を有印公文書偽造・同行使の疑いで、さいたま地検に書類送検した。捜査関係者への取材で分かった。市は今年6月、男性を同容疑で浦和西署に刑事告発していた。
捜査関係者によると、男性は今年1月9~10日ごろ、決裁文書が作成されず、公印保管者などの使用承認を受けずに、正規の手続きをしたものとして土地売買契約書に市長印を押印して、買い取りを希望する会社に交付した疑いが持たれている。容疑を認めているという。
JR与野駅西口の土地区画整理事業を巡って、行政財産のまま、正規の手続きを経ずに市有地を売却した。市は4月、定期監査に向けた文書を確認中に不適正な事務処理を認知。5月に調査検討会議を設置し、10月に「公印管理」など三つの観点から計17項目の再発防止策をまとめた。
男性は市の聴き取りに、相手方から再三、市有地の優先的売却の要望があり、定期的に進捗(しんちょく)状況の確認があったことで「相手を待たせている思いや焦りもあり、この件を早く終わらせたかった」などとこれまでに答えているが、明確な動機は判明していない。男性は8月に市から免職の懲戒処分を受けた。
市有地売却に関する土地返還代と和解金が盛り込まれた2024年度一般会計補正予算案は市議会9月定例会で可決。市関係者によると、その後の手続きで市は土地返還代約8580万円と和解金約300万円を支払い、市有地も返還された。和解金は市が求償し元職員が払ったという。
さいたま市の清水勇人市長は19日、「今後の動向を注視し、引き続き、再発防止の取り組みにより市民の皆さまの信頼を取り戻せるよう全力を尽くしてまいります」とコメントを出した。