埼玉新聞

 

ハリウッドザコシショウ、地元静岡で冠番組 ロングインタビュー「雇われ店長ではない」

  •  ハリウッドザコシショウ=東京都品川区

     ハリウッドザコシショウ=東京都品川区

  •  ハリウッドザコシショウ=東京都品川区

     ハリウッドザコシショウ=東京都品川区

  •  事務所の20周年記念本を掲げるハリウッドザコシショウ=東京都品川区

     事務所の20周年記念本を掲げるハリウッドザコシショウ=東京都品川区

  •  ハリウッドザコシショウ=東京都品川区
  •  ハリウッドザコシショウ=東京都品川区
  •  事務所の20周年記念本を掲げるハリウッドザコシショウ=東京都品川区

 ハリウッドザコシショウの冠バラエティー番組「冠ザコシの冠冠大冠」が、故郷・静岡県の静岡放送で始まり、TVerでも配信する。やりたいことを詰め込んだというザコシワールド全開の番組について聞いた。

 

【ハリウッドザコシショウ】1974年生まれ、静岡市清水区出身。「R―1ぐらんぷり2016」優勝。21~24年、同大会の審査員を務めた。話題の政治家、俳優、アスリートなどを独自の視点で体現する誇張物まねが幅広く支持されている。

目次

(1)雇われ店長ではない冠番組

(2)審査員ザコシ

(3)お笑いと心中する覚悟

(1)雇われ店長ではない冠番組

▼記者 冠番組への思い入れを教えてください。去年は自腹で冠番組(tvkで放送の「提供ハリウッドザコシショウ」)を作りましたね。

●ハリウッドザコシショウ(以下ザコシ) 何個か冠番組っていうのはやっているんです。ただ以前はちょっと“雇われ店長”みたいな冠番組だった。例えば、渋谷凪咲ちゃんとやった「凪咲とザコシ」とか、スカイAの「ザコシ倶楽部」とかは、僕の考えがそこまで通らなかった。提供ザコシの方は、全部自分のやりたいことをやったんですけど。今回は「ザコシさんのやりたいことをやってください」とオファーを受けて。ただ30分番組の全部が全部を攻めた感じにすると、なかなか静岡の県民性とかもあるしね。ちょっとバランスを取ってやりましたよね。

▼記者 ザコシショウさんは今年50歳です。中学、高校でとんねるずやダウンタウン、ウッチャンナンチャンを見ている世代ですから「お笑い芸人で天下を取るイコール自分たちの冠番組を持つ」というようなイメージがあったのではないでしょうか。

●ザコシ むちゃくちゃありましたよ。それこそ静岡に住んでる時に、ブレーク前のウッチャンナンチャンさんの15分番組とかね、「笑点」の前にやってたんですけど。あと竹中直人さんの深夜番組とか、そういうのを見て育ってきたんで。今のバラエティーみたいな感じじゃなかったんですよ。あくまで番組に名前が付いた人がメインだった。ビートたけしさんの番組とか、明石家さんまさんの番組とか、ほぼそんな感じだったんですよ。今の冠番組は一応番組に名前が付いてMCはやっているけど、他にもみんな出てるじゃないですか。

▼記者 「コラーッ!とんねるず」とかですね。

●ザコシ そうそう。あれも15分番組でね。あの感じが良かったんですよ。笑点の前の15分の番組がめっちゃ好きで、よく見てましたね。

▼記者 いよいよ若い頃からの念願がかなったということですね。

●ザコシ まあそうですね。四十何年かかりましたけど。

▼記者 静岡の県民性というお話があったんですけど、例えばどういうところなんでしょうか?

●ザコシ 静岡の人ってあんまり前に出ないというか、ちょっと恥ずかしがり屋というか、仲間うちだけでふざけるみたいなね。そんな感じなんですよね。やっぱり静岡の感じを出した方が親しみを持ってもらえるなっていうのはあるんですよね、静岡交じりの標準語とか、静岡テイストを入れる方がいいですね。TVerでも流れるので、全部が静岡となるとちょっと違うんですけど。

▼記者 (1回目放送の次回予告で)バイきんぐの西村さんと歩いていましたが、あそこは静岡県内でやってるんですか?

 ●ザコシ 例えばご飯を紹介するのは全部静岡です。東京の店を紹介する意味ないから。

▼記者 TVerで全国の人にも見てもらえます。番組の見どころとは? 

●ザコシ 雇われ店長ではないと言っているように、僕とディレクターで案出しから全部やってるんでね。静岡テイストを入れてるんですけど、東京の番組に見劣りしないように作ってるから。自信があるんで見てほしいですね。俺がたまに東京のバラエティーで出るような感じだと、例えばワンコーナーに呼ばれてめちゃめちゃ騒ぎ立てて、終わったらすぐに引き上げる。その他のイメージがあんまり無いと思うんですよ。そういうのも意識してやってるから、まったりトークするとかね。

▼記者 「提供ハリウッドザコシショウ」ではザコシショウさんが回す、ハリウッド軍団とのチームプレイといった笑いもありました。

●ザコシ 今回は別にハリウッド軍団をマストで出すっていうような番組じゃないんでね。僕の思い描いた企画に合った人を、お笑い芸人全体の中から選んでオファーしているから。そこはちょっと違いますね。僕は人選される方だったんでね。僕が人選するっていう番組は、初めてじゃないですか。

(2)審査員ザコシ

▼記者 先ほど若い頃の話もしていましたけど、若い頃に思っていた50歳ってどんな感じでしたか? そして50歳になる自分をどういう風にイメージしていましたか?

●ザコシ 老人ですよ。じいさんですよ。50歳で、やっと冠番組を持てるなんて思ってなかったからね。なんならもう落ち目になって辞めてるような年じゃないですか。20歳で吉本に入って、その時の50歳ぐらいって欽ちゃんとかの世代じゃないですか。結構な上の人ですよね。現実に50歳になってみたら、うんことか言ってるとは思わなかったけどね。結構真面目なこと、堅苦しいことを言ってるような年じゃないですか。

▼記者 50歳になってしんどい部分とかってありますか?

●ザコシ しんどいですよ。老眼はそんなにひどくはないんですけど、ガタがきてますから。腰はそんなに痛くはないけど、肩が痛い。50代になってから明らかに違うのが、夜中眠くなりますね。以前は夜中にずっと編集とかしてたんですけど、最近は明日やろうってなりますね。

▼記者 50代をどのように走っていこうと考えていますか?

●ザコシ 可能ならば、やりたい仕事だけやりたいですね。そういうわけもいかないから、そこはちょっと我慢してやるんですけど、できるだけ楽しい仕事だけをやりたい。そうやっていかないと滅入るから。今回の冠番組はやりたいMAXの仕事ですよ。

▼記者 ところで21年からはR―1ぐらんぷりの審査員を務めています。それによってテレビ局からの扱いに変化があったそうですが?

●ザコシ ゴールデンとか特番でやっているようないいネタ番組があるじゃないですか。審査員をやる前は、あそこに本ネタで呼ばれることは一回も無かったんですよ。10秒で終わらせてくれみたいなコーナーに呼ばれたことはあるんですけど、3分とか5分とかの本ネタで出番が組まれていることは一切無かったんです。審査員をやり始めてから呼ばれるようになりましたね。番組に掛けるネタ自体は変わってないですよ。あとトーク番組にも呼ばれるようになりましたね。前は一切なかったんでね。

▼記者 審査員をやったり、トーク番組で素の部分を見せたりすることで、自分のネタをやる時にプレッシャーがかかることはないんですか?

●ザコシ プレッシャーは特に無いですね。ネタは水物だから滑る時は滑るからね。プレッシャーは無いですけど、審査する時にブレちゃわないようなネタをしないといけないなっていうのはありますけどね。審査する時にコメントを出すじゃないですか。それで「おまえ、そんなこと言ってるけど、こんなのやってたじゃないか」みたいな感じのことを言われないようにね。

▼記者 審査で一貫してるというか、ここだけはブレちゃいけないなとか、まず絶対ここを見るっていうところはあるんですか?

●ザコシ あります。その人がそのネタをやって一番おもろいか、おもろないか。例えばフリップ芸。ネタは面白いよ、でも他の芸人がそのネタやった方が面白くなるっていうのは、ちょっと違うんじゃないかって思う。それは日本一じゃないから。街裏ぴんくのネタって、街裏ぴんくでしか面白くないじゃないですか。家でネタを考えてきて、舞台上で読むだけってちょっと違うような気がするんですよね。そこで演じてくれないと。自分なりの魂を入れた言い方とか、ネタプラスアルファだからね。火力が無いというかね。

(3)お笑いと心中する覚悟

▼記者 今秋発売の事務所の20周年記念本「SMA芸人 その姿勢と生き様」を読みました。その中でやす子さんが以下のような発言をしています。「ザコシショウさんもバイきんぐさんも『せっかく売れたのに不祥事を起こして出られなくなるのがもったいない』といったことを話していて感銘を受けた」

●ザコシ 別に昔のお笑い芸人だったら、いいと思うんですよ。芸の肥やしみたいな。そんなんね、もう最近は無理やから。俺はでも、全然遊んでもいいよとなったとしても、あんまりやらないと思うんですよね。僕の性格上なんですけど、他に熱中しているものがあると半減するんですよ。お笑いに熱中できなくなっちゃう。かわいい子とどうこうしたいという気持ちは人間だからあるけど、お笑いを捨ててまでそれをやりたいかって言ったら、ちょっとやりたくないからね。てんびんにかけて、ガッツリお笑いの方が重いから、俺は。

▼記者 ずーっと興味を持って遊んでいたり、夢中になっていたりしていたもので、結果として現在の役に立っているなということはありますか?

●ザコシ ゲーム、ファミコンの物まねとかプロレスだったりね。あと、やっぱりお笑い番組のビデオとか、好きでずっと漁って見てましたね。編集のソフトだとかカメラ、ピンマイクだったりね、そういうのを売れてからそろえることができたんでね。そんなんで理想の映像を突き詰めて自分で撮って編集とかしてると、それが趣味になってきて。だから毎日動画をやっても苦じゃない感じになってますけどね。

▼記者 一番忙しい先輩が、さらに動画とかを頑張ってやってるっていうのは、後輩も見習わなきゃいけないのかなと。

●ザコシ そこは見習わなくていいです。自分でやってて異常だなと思ってるんで。毎日機材で動画を撮って、家でパソコンに向き合って編集するなんて、10人芸人がいるとしたら1人もいないと思うんですよ。普通の芸人はディレクターがやって満足するんですよ、でも俺は、自分の満足がいくようにやりたいっていう欲があるから。人にやってもらってちょっと違うなと思うよりは、もう自分でやっちゃいたい。

▼記者、この本で推したい事務所の若手として「だーりんず」と「チャーミング」の2組の名前を挙げています。

●ザコシ 若手じゃないですよ。面白い部分はあるんですけどね、でも、ここ(本の表紙)に出てる人(ハリウッドザコシショウ、バイきんぐ、錦鯉など)とは完全に違うところがあるんですよね。やっぱりお笑いと心中してもいいと思ってないというかね。覚悟がないんですよ。そこまでずっと突き詰めてやっていないというかね。四六時中お笑いのこと考えてるかって言ったら、絶対考えてないからね。雅紀とか小峠とか、自分のやってるお笑いに自信っていうのが絶対あるから、なんとなくでお笑いをやってないんですよ。そこがこの3組との違いですね。

※「冠ザコシの冠冠大冠」は5カ月間で5回放送予定で、初回は12月1日午前0時28分から。同日正午からTVer(ティーバー)でも配信する。

(取材・文=共同通信 近藤誠、撮影=佐藤まりえ)

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