ずっと「殺さないで」と懇願…男性を何十回も殴った強盗団「アドレナリンが出た」 玄関を開けた瞬間襲撃「ぞっとした」 襲った無職22歳に懲役11年 誘った仲介役は唯一の友人、実家が隣同士「決別する」
2022年に埼玉県、茨城県で6件の強盗や窃盗事件を繰り返したとして、強盗致傷などの罪に問われた茨城県日立市、無職北河原大地被告(22)の裁判員裁判の判決公判が27日、さいたま地裁で開かれた。小池健治裁判長は計画的な犯行で「必要な役割を果たした」として、懲役11年(求刑・懲役17年)を言い渡した。
小池裁判長は判決理由で、「多額の現金があると事前に知っており、下見するなど計画的。脅迫や暴行も行い、高額の現金を奪った」と指摘。仲介役の男を通じ上位の共犯者の指示に従ったとしつつ「各現場で必要な役割を果たした」と認定した。友人だった仲介役の当時19歳の男については「関係を利用し、北河原被告を(犯行に)関与させた」としたが、「断りたければ警察に相談すべき。悪質さを顧みず、安易に犯行を重ねた」と批判。一方で「共犯者らと決別すると反省の言葉を述べている」点を考慮したと説明した。
小池裁判長は判決言い渡し後、「仲介役の男に流されているように見える。おかしいと思うことを『やめたい』と言えるようになり、どう生きたらいいか考えてください」と説諭し、北河原被告はうなずきながら耳を傾けた。
北河原被告は共犯者から「頼りない」と指摘されていた。弁護側は「末端の中の末端で、責任のある役割は任されていない」とし、懲役8年が相当と主張していた。
判決などによると、北河原被告は共謀して22年6~12月、川口市や茨城県つくば市などの住宅に侵入し、現金を奪うなど、強盗4件、窃盗2件の事件を起こした。
■仲介役は唯一の友人、実家が隣同士だった(以下、判決公判前記事から一部抜粋)
2022年に埼玉県、茨城県で6件の強盗や窃盗事件を繰り返したとして、強盗致傷などの罪に問われた無職の男(22)=茨城県日立市=の裁判員裁判。検察側は「昨今、社会問題化している強盗事件について警鐘を鳴らす必要がある」と懲役17年を求刑。一方、弁護側は男が「末端の中の末端」だとして、懲役8年が相当と主張した。男は伸びた髪を一つに結び、緊張した様子で出廷し「自分が身勝手で浅はかでした」と謝罪の言葉を口にした。
公判によると、男はアルバイト先の飲食店の同僚の男=当時(19)=から「稼げる仕事がある。やるなら内容を教える」と勧誘された。犯罪と分かり拒否したものの、「『ケツ』を取らされるかも」と経済的、身体的な制裁をほのめかされた。男はその後、他の同僚も勧誘。以前の勤務先の先輩だった指示役の男(26)と実行役を仲介する役割を担ったとみられる。
19歳の男が証人尋問で「頼りないが面白い人」と話すなど、実行役の人間関係の中で、男は年下の共犯者らより低い立場だったとみられる。22年10月の茨城県坂東市の強盗事件では、指示役から「現金を裸で置いている」と情報を得た住宅に侵入。男が物音を聞き逃げ出し、実行役4人全員が車に戻った。その後、再度侵入するが、男は車に一人で残され、報酬も4人の中で最も少なかったという。
実行役らは家の外に逃げる被害者の男性を追いかけ、別の実行役の男=逮捕当時(17)=が「上半身を何十発か殴った」。その後、男性に金品を要求したとし、男は「アドレナリンが出た。お金のことを聞いているのに、ずっと『殺さないでくれ』と言っていた」と振り返った。検察側が読み上げた調書で、被害男性は、強盗による恐怖とともに、「(暴行による)痛みが引くまで農業の仕事が再開できず、栽培したネギが出荷できなかった」と経済的な損害も訴えた。
男は22年11月の川口市の強盗事件で、住宅に保管されていた現金約500万円を見つけるなど、主体的に関わった様子もある。被告人質問で、実家が隣同士だった仲介役の男の他に「友達がいなかった」とし、「絡んだことが人生の汚点だった。二度と関わらない」と語った。
■抵抗したら殺されたかも(以下、論告求刑公判記事)
2022年に埼玉県、茨城県で6件の強盗や窃盗事件を起こしたとして、住居侵入、強盗致傷などの罪に問われた茨城県日立市、無職の男(22)の裁判員裁判の論告求刑公判が21日、さいたま地裁(小池健治裁判長)で開かれた。検察側は懲役17年を求刑し、弁護側は懲役8年が相当と主張して結審した。判決は27日に言い渡される。
論告で検察側は、6件の事件について「組織的かつ計画的で、被害者に強い恐怖や金銭的損害を与える粗暴な犯行」と非難。「強盗の報酬を高級スーツや旅行の費用に充てていた」と常習性を指摘し、「昨今、社会問題化している強盗事件について警鐘を鳴らす必要がある」と厳罰の必要性を強調した。
また、22年11月に川口市の住宅に押し入り、現金約500万円を奪った事件では、ガムテープで縛られる暴行を受けた住人の男性=当時(23)=が被害者参加制度で出廷。「抵抗したら殺されていたかもしれないと思うとぞっとする」と振り返り、「被告に謝罪の気持ちは見受けられず、恐怖や怒りが収まらない。最大限重い処罰を希望する」と述べた。
一方、弁護側は男が「末端の中の末端。(他の実行役の)足を引っ張ることもあった」と役割が大きくなかったと主張。社会への警鐘のため厳罰を科すことについては「より重く処罰されるべき指示役は1件しか起訴されていない。末端の男を重く処罰するのは本末転倒」と反論した。男は最終陳述で「自分は身勝手で浅はかでした。被害者の言葉を一生忘れない。申し訳ありませんでした」と述べた。
起訴内容などによると、男は22年6~12月、氏名不詳者らと共謀し、つくば市の住宅に侵入。住人の男性=当時(70)=に「殺すぞ」などと脅迫して現金約24万円を奪うなど、6件の事件を起こしたとされる。
■自力でガムテを解いた男性、隣家に助けを求めた(以下、初報記事)
2022年11月15日午前11時半ごろ、川口市前上町の戸建て住宅に性別不明の2人が侵入し、家屋内にいた20代男性にけがを負わせ、現金や銀行通帳などを奪い逃走する強盗致傷事件が発生した。
川口署によると、2人は住宅のインターホンを押し、被害男性が玄関を開けたところで室内に押し入った。その後被害男性をいすに座らせて両手、両足といすの足をそれぞれガムテープで縛り、刃物のようなものを突き付け「金目の物はどこだ」などと脅迫したという。2人は住宅内を物色し、現金約500万円と複数の銀行通帳を奪い逃走。男性は手に擦り傷を負ったが軽傷だという。
2人の逃走後、男性は自分で緊縛を解いて隣家に助けを求め、午後0時7分に「家で一人でいたところ、不審者に侵入され襲われた」「ガムテープで体を抑えられた」と110番した。
2人の特徴は、1人目が20~30代くらいで身長170センチ、黒っぽい服装で黒色の靴、目出し帽を着用していた。2人目も黒っぽい服装だったという。