<月曜放談>びっくり!男性トイレの個室にごみ箱は無い がん治療後に必要な尿漏れパッド、捨てるところは
■尿漏れパッドはどこへ/日本骨髄バンク評議員・大谷貴子氏寄稿
2人に1人ががんと診断される時代になった。今や治療成績も格段にあがり、がんを患っても社会復帰を果たす人はとても多い。
ここに国立がん研究センターが発表している二つのがんの2018年度の診断数を記す。
前立腺がん=男性のみ9万2021人
膀胱(ぼうこう)がん=男性1万7555人、女性5675人
前立腺という臓器は男性にしか存在しないから当たり前だが、膀胱がんは圧倒的に男性の罹患(りかん)率が多い。
これらのがんの治療後の生活に欠かせないものの一つに尿漏れパッドがある。今は、とても優れた尿漏れパッドが発売されており、すぐに社会復帰を果たす即戦力にもなっている。
しかし、「外出先でこの尿漏れパッドを捨てるところが無い」という話を昨年の6月に聞いた。治療直後は“失禁”という表現では表せないぐらいに尿が漏れる。つまり、水分を含み、重くなった尿漏れパッドを持ったまま、ごみ箱を探すというのだ。
なぜ? 個室のトイレで交換するだろうし、個室の中にはごみ箱は無いの? 率直に聞いた。そして、私は初めて知った。男性トイレの個室の中にはごみ箱は無いということを。
私たち女性は生理用品を捨てるサニタリーボックス(汚物入れ)が常設されている中で生活をしているので本当にびっくりした。これは大変な問題だと感じた。早速、調べてみたところ、病院内の男性トイレにはごみ箱が設置されているそうだ。さすがだ。また、公衆トイレでも多機能トイレには常設されている。しかし、個室内にはごみ箱はほぼ常設されていない。
私の訴えを聞いたさいたま市議が調査をした結果、さいたま市の公共施設333施設の内、8施設のみ設置されており、その内、4施設の設置理由が「尿漏れパッドを放置されたから」「水洗トイレに流されて詰まったから(2施設)」「尿漏れパッドを使用している人が多いから」とのことだった。私は、やはり、ごみ箱の必要性は大きいと感じた。
そんな中、日本トイレ協会という存在を知る。協会の方も私からの疑問に驚きを隠されなかった。そして、私がずっとこのことに関して、問題提起をしているので、ついに当事者の方々へのアンケート調査に着手、2月にはセミナーの開催まで企画された。
協会によると、おむつや生理用品を捨てると自動的に真空パックになり、ごみ箱の下にストンと落ちる製品もあるとのこと。そのごみ箱なら生理用品よりはるかに大きい男性用尿漏れパッドも入る!。しかし、現在のところ、その製品すら女性用のトイレにしか常設されていないのが現状だ。その製品が男性トイレの中に常設されれば、パパが赤ちゃんのおむつ替えをすることも可能になり、女性から男性のトランスジェンダーの方々にも朗報になると信じている。
昨年の6月より、機会あるごとに、さまざまな方に尋ねてみた。女性は男性トイレにごみ箱がないことを一様に驚き、男性の当該がん患者は困っていたが声をあげるまでにはいたらない。いや、仕方がない、人に知られたくないから言いたくないと思っていたようだった。が、「実は…」と当事者だったときに困ったことを話してくれる男性もやっと現れるようになってきた。
当事者となって困る前に皆でなんとかしませんか?