埼玉新聞

 

銃は何のために持っていた…散弾銃使った立てこもりに怒りと困惑 愛好家ら、射撃競技への悪影響を懸念

  • 立てこもり中の現場付近を警戒する警察官ら=1月28日未明、ふじみ野市

 「考えられない」「残念」。ふじみ野市で散弾銃を使った立てこもり事件が発生したのを受け、県内で銃砲を取り扱う店舗や愛好家らから怒りと困惑の声が上がっている。散弾銃など猟銃の所持にはさまざまな条件と制約が設けられ、厳格に管理されている。所持者同士のコミュニティーには互いの異変を察知する「監視」の効果もあるといい、立てこもった男(66)にそうした仲間がいなかったことが事件につながったとの指摘もある。

 「銃を取り扱うからにはそれなりの責任を持つのは当たり前。考えられない」。県内居住のクレー射撃愛好家の男性はため息をつく。「ほとんどの人が真面目にやっているのに、残念だ」と事件が与える悪影響を懸念する。

 捜査関係者によると、事件で死亡した医師の鈴木純一さん(44)は胸に銃弾1発を受け、死因は心臓破裂だった。弾は体内を貫通しており、至近距離から撃たれ即死だったとみられる。

 男が所持していたのは散弾銃2丁。それぞれ2000年と08年に的に向かって銃を発射することを指す「標的射撃」目的での使用が許可されており、20年11月に許可が更新されていた。

 県警保安課によると、21年末時点で県内で許可証を交付されている人は前年同期比95人減の4008人で、散弾銃やライフル銃、空気銃の合計登録数は同比168丁減の8531丁。銃を取り扱うには、県警が開いている講習会に参加することや考査の合格など、複数の手続きが求められ、管轄の警察署から所持許可証を交付される必要がある。

 許可証の申請や3年に1度ある更新には、使用者の犯歴や破産手続きの有無、精神障害を抱えていないことを示す診断書など使用者本人の状況を精査する必要もあり、一つでも資格を満たせなければ許可や更新ができないことが銃刀法で定められている。さらに更新時には、射撃場訪問や大会への参加など銃の使用実績を報告することが求められるほか、年に1度、管轄警察署で登録された銃の検査も行われており、その際に使用実績などを口頭で確認するなど、使用者の行動についても厳格に管理されている。

 県北部にある銃砲店の店主の男性は「男は一体、何のために銃を持っていたんだ」と首をかしげる。昨夏の東京五輪で公式種目となった陶器製の標的を撃つ標的射撃競技「クレー射撃」などの影響で、新たに銃を手に取る人が現れ始めた矢先の事件に怒りが込み上げた。

 男性は店を訪れる客に銃を取り扱う仲間をつくることを勧めているという。「気軽にコミュニケーションを取れる数人ほどの仲間をつくることで情報交換ができる一方、お互いに異変がないかを監視し合う効果もある」とし「あくまで推測だが、(男は)そのような関係を持つ仲間がいなかったのではないか」と話した。

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