顔を見たくない…順天堂大“新病院”断念、地元「裏切られた」「手を挙げたにもかかわらず、不誠実で調子がよすぎる」 埼玉各地に医師派遣どうなる…大きな影響ないと言える理由は
さいたま市美園地区に予定していた順天堂大学新病院の整備計画の断念が、29日公表された。同大学の代田浩之学長らがこの日、大野元裕知事を訪れて計画断念を報告。2020年度だった開院時期は、新型コロナの影響や当初計画の約2・6倍まで膨らんだ事業費などもあって度々延期となっていた。期待が高かった地元では関係者から「非常に残念」「裏切られた」など落胆の声が上がった。
■「不誠実」「裏切られた」
浦和美園地域経済人の会の積田鉄也会長(積田冷熱工事代表取締役社長)は「非常に残念。日に日に人の流れが増え、さいたま市の中でもこれからの地域。マンションや学校が建ち、なくてはならないものとして病院も注目されていた」と話し、「他の病院を誘致するか、シンボル的な建物に利用されることが望ましい」と予定地の有効活用に期待を込めた。
かねて整備計画の遅れを危惧していた小島信昭県議=南12区、さいたま市岩槻区=は「手を挙げたにもかかわらず、不誠実で調子がよすぎる」と厳しく指摘。大学側の説明責任については「正直、顔を見たくない」と地元住民の思いを代弁。県東部地域に同大学が農学部と獣医学部のキャンパス設立を検討していることには「並行して話が出ているが、一つのことをやり切ってほしい」と注文を付けた。
2023年12月の県議会一般質問で「順天堂大学病院の整備が本当に医師不足解消の切り札になり得るのか、疑問符を付けざるを得ない」との考えを述べていた深谷顕史県議=西7区、川越市=は「社会情勢を踏まえた資金不足ということだが、度々計画を延期してきた対応は不誠実で、裏切られた形」と、次善策の検討を課題に挙げた。
■大きな影響ない/県医師会の金井会長
順天堂大学がさいたま市の美園地区での新病院開院計画を中止したことを受けて、県医師会の金井忠男会長は取材に「残念ではあるが、ここまで時間がかかると仕方がない。これ以上待つのは限界だったと思う」と述べた。
2015年の当初計画では、20年度開院とされたが、延期や計画変更が繰り返されてきた。最終的に事業費は当初見込みの約2・6倍である2186億円となり、開院予定時期はさらに27年11月から20カ月遅れることが示されていた。新病院計画の中止により、開院の条件の一つだった医師不足地域への医師派遣への影響も懸念される。
ただ、金井会長は「あまり大きな影響はないだろう」とし、その理由について「(当初計画が作られた)10年前と今では状況が違う。今は、一病院の医師派遣よりも県内の病院間の連携が重要になっている」と語った。
また、今後については「中止決定によって不都合が起きた時の対応を医師会として話していきたい」とした。