到底あり得ない…埼玉の猟友会が不安、立てこもりでイメージ悪化したら会員減少も 増える獣害、切実な思い
ふじみ野市で1月、男が自宅に立てこもり、猟銃で医師を撃って殺害した事件を受け、県内で有害鳥獣捕獲を行っている狩猟関係者に「狩猟者のイメージが悪くなってしまう」「メンバーの減少につながってしまうのでは」と不安が広がっている。猟友会の会員らは、日々徹底した銃器管理の下、野生動物から農家の食害被害を防ぎ、生活環境の保全に尽くしている。「二度と同じような事件が起きないでほしい」。狩猟者らの願いは切実だ。
「今後、猟銃取得の規制が強化されて、新規の会員が減ってしまうのでは」。秩父市吉田地区と小鹿野町内の狩猟者ら計約140人で構成する西秩父猟友会の竹内勝利会長(68)は事件の影響を懸念する。
同会は各自治体から依頼を受けて、山に生息するシカやイノシシなどの有害鳥獣駆除を毎週行っている。また、毎年12月に開催する小鹿野町の飯田八幡神社例大祭「鉄砲まつり」(県指定無形民俗文化財)では、御神馬が参道を駆け抜ける「お立ち神事」で猟銃の奉納を披露し、伝統継承にも貢献している。
全国各地で狩猟者の高齢化や、なり手不足が問題になっている。しかし、同会では「地域の環境保全や祭りの伝統継承に協力したい」という若者の入会が増えているという。「最近はシカが多くなり、人手はいくらでもほしい」と竹内会長。
事件後、同会の役員らはミーティングを開催。地域住民に安心してもらえるよう「狩猟前の安全射撃や散弾整理などを、全会員が一体となって行っていこう」と、猟銃事故防止の徹底を改めて誓った。
竹内会長は「『自分の銃で絶対に事故は起こさない』と、自覚している猟師たちにとって、今回の事件は、全くもってあり得ない出来事。これからも、会員一人一人が自己管理能力を高めていくしかない」と話した。
旧荒川村(現秩父市)をエリアとする奥秩父猟友会荒川班代表の小池武夫さん(69)も「狩猟者がこのような事件を起こすことは、到底考えられない。今回は全く別次元の話」と指摘する。
猟銃所持者は普段、銃器と実砲を別々に保管し、銃器に実砲などが装填(そうてん)されてないかを念入りに確認している。銃器もできる限り分解し、規格に合った別々の保管庫に施錠している。
「厳重管理のため、銃器の組み立てに時間がかかり、出動準備に最低5分は必要。急を要する出動依頼には応えられないこともあるが、規則を守るためには仕方がないこと」と小池さん。
最近はサルが農作物を荒らし、地元農家を困らせている。桑の木に新芽が芽吹く春先には、シカなども多く出没し、駆除の依頼が集中する。小池さんは「銃で狩猟をやりたいと考える人たちは、強い志を持って免許を取得している。このような事件は、もう二度と起きてはいけない」と語った。