順天堂大病院の計画中止…埼玉県は賠償請求せず「確認書は曖昧な約束」 県議会では疑義唱える声多く 800床の病床は…
埼玉県さいたま市の美園地区に新病院整備を計画していた順天堂大学が11月29日に計画の中止を届け出たことを受け、6日の県議会で質問が相次いだ。永瀬秀樹県議(自民)=南2区、川口市=の、大学側に契約不履行による損害請求を行う考えがあるかとの問いに、大野知事は「(顧問弁護士の見解では)書面で交わされた確認書は曖昧な約束であり、権利義務が生じたと考えることはできないと承っている」と、現時点で請求する考えがないことを明らかにした。
公募を経て計画が推進された経緯を踏まえ、見解に対して議会では疑義を唱える声が多く上がった。永瀬県議が「複数の弁護士に意見を徴収するなど慎重な対応を」「対応を再考するということか」と再質問、再々質問すると、大野知事は「複数の弁護士、専門の方々にお伺いすることについて対応したいと考えているが、専門家の見解によって、再考するかしないかは、その後検討させていただく」と答弁した。
病院誘致の最大の目的だった県内医師不足地域への医師派遣について大野知事は、開院前までは2人、その後2032年度から20人規模となる予定だった計画を踏まえ、現在、秩父市立病院と済生会加須病院に派遣されている2人は任期まで継続し、その後は別途協議に応じるとした代田浩之学長の意向に言及した。
順天堂大学に割り当てられていた800床の病床が未整備となることや、病院建設予定地の活用について大野知事は「医療提供体制を協議する地域医療構想調整会議や医療審議会において地域の医療ニーズを伺うとともに、さいたま市とも丁寧に協議を行いながら検討する」と述べた。
塩野正行県議(公明)=南2区、川口市=が「確認書が足かせとなり、県の判断も苦しめたのではないか」と質問すると、大野知事は「財政支援は『予算の範囲内で行い、補助率は2分の1以内』としており、整備費に連動して財政支援額が増える仕組みにはなっていない。具体的な財政支援に関する要望は一度もなく、判断に苦しむということはなかった」と強調した。
白根大輔県議(民主フォーラム)=南2区、川口市=は用地取得費用を除く管理維持費用を問い、大野知事は「19年度から23年度までの5年間で約2300万円支出し、内訳は除草に係る業務委託料、フェンスの修繕および防草シートの設置費用」と答弁した。